買い先行の買い替えと金融機関の旧住宅ローンへの対応
買い先行で買い替えを行いたい場合、既存の旧宅の住宅ローンの取り扱いが焦点の1つです。旧宅を相場価格でジックリ売るためには、旧宅の住宅をローンを抱えつつ、新宅の住宅ローンを組むことができることが理想です。
たとえ一時的にでも二重で住宅ローンを組むこと認めることは、銀行にとっては大きなリスクです。売れなければ返済が滞ることなどです。
そのため、二重のローンを組むことを容認する銀行と消極的な銀行があります。
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author:春日秀典
目次
買い先行の進め方
買い先行とは、マンションの売却と新居の購入において、先に新居を購入する流れです。同じ買い先行とはいえ、進めたい方向性により、新宅の売主や旧宅の買主が不利になることがあります。
停止条件付売却
買い先行において、新住宅の買主が所有する物件の売却にフォーカスした進め方です。旧自宅が売れたら購入側の決済をするという条件で契約します。
ただ、停止条件付契約とすると、旧宅の買手が見つかる時期が不明確です。つまり、売り手の新しい物件が売れるかどうかは、実際に売り出してみなければわかりません。著しく売主の立場が弱くなりますので、この条件で売却を受託する売主は基本的には存在しません。
このように考えると、停止条件付の契約の成立は非常にハードルが高いといえます。そのため、これを前提とした家探しは不可能といえます。
期限付きの売却
旧居の売却期限を明示することで、新居の売主に条件を受託しやすくなります。売り手が待たされることは避け、期限を設けることも重要であると言えます。言い換えると、旧居を売却するために、新居の決済の期間を通常よりも長期で定める手法ということです。
ただ、これだと先に購入することはできますが、旧居を売るのに買い叩かれる可能性を否定できません。売らなければならない時間が決まっていますので、焦って値下げをしてくれます。また、仲介業者が買取業務も行う業者であれば、上手くいけば、買い取りをすることができます。さらに儲かるかもしれません。つまり、時間が過ぎるのを待っていたほうが、どのように転んでも仲介業者からすれば、楽に仕事ができるのです。
買取尾業者への売却
スケジュール通りに売るには買取業者に売るという選択肢もあります。ただ、買取業者に売ることは、市価の2~3割引での売却であることが前提です。契約不適合責任を免責にしてくれたり、選択肢としては重要ですが、売却価格を重視する売主は、選択できる方法ではありません。
資金的に二重ローンは組めず、売却に時間的な余裕がない場合もあります。さらに旧宅の内装の状態がきびしく、在宅のまま売却するのにも一苦労が予想される場合には、買取業者を活用する方法が有効といえます。業者は資金力があり、決断もスピーディで、好みや嗜好は問いません。あとくされないように、瑕疵担保の責任を取らない契約も可能です。
「買い競争」をしかけることで、高い売却価格を実現することもあります。最終的には個人が買う相場と著しく近くなる場合もあります。複数の選択肢の中からより良い条件の買い手を選ぶことができます。
当社では買取業者への仲介は手数料無料です。すでに見積もり済みなら、その価格以上の買取も可能かもしれません。詳しくは「手数料無料の売却」にてご説明をしています。
買取保証
「先に売り出しをして最後に買取業者への売却」という方法と類似して、「買取保証付きの仲介」を提案されることがありますが、これは愚策です。
なぜなら、仲介なら業者の手数料は6%ですが、買取なら業者の利益は15%です。しかも、他の業者と競わず、底値で購入できます。つまり、仲介業者は努力をしないで待っていれば、仲介業者の利益が最大になるという変な話です。不動産の話でも、もっともらしく見えても、どこか変に感じる話の場合、多くの場合、上手く丸め込まれているとみて間違いありません。
「買取と通常の売却だからちょうど中間でいいや」と考えているならば甘いです。買取保証も買取価格と変わらない展開に落ち着きますし、むしろさらに安くなる場合もあります。これも待っていたほうが仲介業者は楽できますので、まったくお勧めできません。
売り買いの二重ローン
売却時にローンを抱えたまま新居の購入を先に進め、後に売却を行う手法です。この手法は、自由度を得て有利な選択肢を得ることができます。つまり先に新居を購入する後で売却をじっくり行います野で、売り急ぐ必要がありません。一時的にせよローンを二重に抱えることになるので資金の捻出が大変ですので、余裕のある人におすすめできます。
対応できる銀行とできない銀行がありますが、多くの銀行では新旧住宅ローンの返済を合算したうえで、銀行所定の返済比率に収まるのであれば対応可能というところが多いと思います。
二重ローンに対するメガバンクの対応
買い替えを行う場合、残債抹消するための売却とその手続きに神経を使うために、「売り」「買い」の不動産屋さんは同一のほうが手続きでスムーズであるといわれています。ラインによる売却のご相談も対応していますので、あわせてご利用ください。
三菱UFJ銀行
他行のローンであれば、新旧ローンの合算が所定の返済比率に収まるのであれば対応できます。
旧ローンの返済比率の切り離した対応は事実上難しいと思います。対応をしてもらうには現在の残債額の120%にて売買される売契があることが必要です。つまり買い先行には適さないと言えます。
元本据置の対応はしていません。
三井住友銀行
原則は他行のローンで新旧ローンの合算が所定の返済比率に収まるのであれば対応できます。
旧ローンの返済比率の切り離しは、旧住宅の残債が評価額を下回ることができれば対応はできます。ただし評価額とは銀行所定の評価額です。
元本据置の対応はしていません。
みずほ銀行
原則は他行のローンで新旧ローンの合算が所定の返済比率に収まるのであれば対応できます。
それに収まらない場合、残債額が評価額の120%以内なら対応できます。ただし評価額とは銀行所定の評価額です。
元本据置の対応は対応できます。据え置き期間は1年まで対応できます。火災保険には銀行の質権設定をいたします。なお返済期間自体は契約期間を下回ることはできませんので、通常の同期間の返済より、1か月あたりの返済は大目になります。たとえば、35年返済の契約で、据え置きを1年と契約すれば、実質の返済期間は34年です。
りそな銀行
原則は他行のローンで新旧ローンの合算が所定の返済比率に収まるのであれば対応できます。
それに収まらない場合、3か月以内での売却が確実であれば対応できます。売却物件に対しても、売却価格と流通性についての審査を要します。
元本据置の対応は対応していません。
二重ローンに対する他の金融機関の対応
全国保証利用銀行
対応できません。世帯に1本の住宅ローンが原則となります。
フラット35
フラット35では2020年4月より以下のような取り扱いになります。以前は「媒介契約書」の提出だけで対応できましたが、確認事項が厳密になりました。
現在居住している住宅で、返済中の住宅ローンの融資対象となっている住宅を売却予定で、売却予定額により住宅ローンを完済できることが確認できる場合には、当該住宅ローンの返済額を総返済負担率の算定での年間合計返済額から除くことができます。
ただし、売却予定額が返済中の住宅ローンの残高に満たない場合であっても、差額を自己資金や新規借入金で賄うことが資料等により確認できるときは、総返済負担率の算定で、返済中ローンを年間合計返済額から除くことが可能です。
SBI住信ネット銀行
銀行所定の返済比率で新ローンを計算、旧ローンは現在の支払い年額を計算してストレスを加算、この条件で、返済比率35%(諸費用も借りるのなら30%)以内で収まるかどうかを審査する。
売り物件への売却活動も審査の対象となる。売却価格や売却スケジュールを明言してもらい、銀行が売り物件の査定額と旧ローンの残債額の乖離を確認して、判断する。
ソニー銀行
売却前提の場合、返済比率には参入しない対応が可能。半年以内に売却しなければなりません。ただし旧宅の評価をソニー銀行側の評価額の9がけで見たうえで、残債額を下回っている必要があります。したがって旧宅の購入後、やや期間が短いと評価されないことがあります。決済時に売却の契約書を提出を要します。