「専任返し」の弊害と見分け方

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「専任返し」とは、買取業者が物件を仕入れるとき、通してくれた仲介会社に返礼として商品化した物件の再販売を任せることです。「売り返し」ともいいます。

買取価格は市価よりも低くなりがちで競争も激しいため、返礼という事態がなりたちます。仲介業者はもともとの売却の6%+商品物件の売却の6%の手数料を取ることができます。

仲介業者は売却先を優先させますので、買取業者間の競争が生じにくいことが、元々の売主にとっての弊害です。

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専任返しとは

買取業者が事業のために物件を仕入れるとき、仲介会社を経由して物件収集をします。業者が仕入れることができたとき、その返礼として、商品化した物件の売却を、「専任媒介」として仲介会社に任せて再販売するという場合があります。これが「専任返し」です。

売却先を優先することを裏交渉して、買取業者間の競争が生じない環境を仲介業者がつくることは、いささか商道徳的に疑問もあることから、当社の売却仲介では行っていない手法でもあります。

物件を卸す

仲介業者が買取業者を買主として仲介することを「卸す」と言います。問屋の卸しになぞらえた表現だと思われます。仲介業者は売り上げに不安定さを抱えていますので、専任返しは上手くハマると非常においしい取引です。

卸した物件の再販売の委託をとれると、最終のユーザー(エンドユーザー)への仲介までに、業者は累計4か所から手数料を取れます。物件の流れは個人(1か所目)⇒買取業者(2か所目)⇒商品化(3か所目)⇒個人(4か所目)という流れになります。

非常においしい取引ですので、通常の販売活動をサボることまでして、意図的に専任返しを作る業者・担当者もいます。

いささか弊害がある取引

ただ、仲介の不動産業者に有利なのですが、取引当事者にとってはやや弊害があります。

まず、買取業者に売り渡す売主にとっては、売渡価格に不利になる場合があります。買う業者が絞られてしまうからです。売主にとっても、専任返しをする不動産会社とは、取引は慎重にすべきかもしれません。

一方で、買取業者にとっても不利な点はあります。専任返しは1社限定の販売のため、販売力が落ちるからです。

さらに、商品物件の買主にとっても不利な点はあります。仲介業者は1社限定となることが多く、選択肢が生まれません。また。「未公開」などと煽れば、不動産取引が不慣れな買主にとっては、煽りが利く特殊な状況が演出できます。買主にしてみると、正常な判断を失わせる可能性があります。ネットにも一切出ていない物件であれば、価格の適正性を判断できない状況かもしれません。「諸般の事情を差し置いて、高くてもかまわないからこの物件限定」などの事情がない限り、取引は慎重にすべきといえます。

このように、やや不透明さを抱えた「専任返し」を行う不動産業者の営業姿勢は疑わしい可能性があります。営業姿勢が疑わしい不動産会社が、あなたにだけは親切にしてくれることはありません。

どのような物件か

商品である物件が専任返しの対象となります。つまり、専任返しは以下の物件で生じます。

  • 建売一戸建て
  • 条件付きの土地
  • 新規・未入居のリノベーション住宅

リノベーションは新規であることがポイントです。数年前にリノベーションされた物件は、多くの場合居住中ですが、空室でも個人が売主であることがほとんどです。

誰がやっているのか

現場の不動産界隈では、営業所レベル・担当レベルでは日常的です。背任的な要素もありますので、濃いグレーですが完全に黒ではありません。

実際には多くのケースで行われています。大手業者もやっています。むしろ大手は数字に厳しい側面がありますので、肌感覚では大手のほうが多いと思います。

待っていると仲介手数料無料になることもある

専任返しの解除

専任返しをしている物件は販路が制限されますので、一般的には売りづらいものとなります。このままだと、売れないこともありそのため、長期間に渡り専任返しをしている物件は、売主の判断でいづれ解除されます。

しかし、売れていないという実績があるので、専任返しを解除されると、ときどき、販売価格を値下げされることがあります。値下げ物件は価格交渉・値引き交渉はできない可能性もありますが、不適正価格で買うよりましです。また、少しお待ちいただけると、手数料無料として再登場する場合もあります。この観点からも、お時間がゆるすのであれば、お待ちいただいたほうがいいかもしれません。

手数料無料に

商品物件(リノベーションマンション・新築一戸建て)にもかかわらず、「専任」「専属専任」で販売されている場合があります。このような物件は待っていると仲介手数料無料になることが多いです。専任返しといいいますが、売主業者が、特定の仲介の不動産業者に売却を専任媒介にて一定期間委託しているためです。専任返しが行われるのは、多くの場合工事期間中です。

売主業者は売却して必ず資金を回収しなければなりませんので、専任業者による売り方が悪ければ、専任が解除されます。専任が解除されると、仲介手数料無料の物件としてリリースされてきます。お時間に余裕があるならば、お待ちいただくとリリースされてきます。

専任を解除せせるには

専任返しは業者間の信頼に基づいて行っていますので、残念ながら、外部の者が能動的に解除をさせることはできません。

買取業者も売れないと事業になりませんので、通常は1~2か月程度では専任は解除されて、リリースされてきます。まれに、気のいい売主さんでは、まれに成約するまで期限を延長しつづけるケースもありますが、そういうタイプは仕入力の弱い中小零細の売主が多いようです。リフォームが雑だったりするので、長期間かかっても売れないという光景がよくあります。

先に買われてしまうリスク

上記のように、専任返しが行われる場合には、建築中・施工中に専任返しが行われていることがほとんどです。完成すると資金を回収しなければなりません。そのため専任が解除されます。建築施工中は様子見をすることができるので、値下げをすることも、価格交渉に応じることもほとんどありません。そのため、建築施工中は待っているのが得策です。

ただ、お客様の中では、買い急いでいるため慌てて飛びつく方もいますし、場所限定で探している方は、多少の金額には目をつぶって購入に進むこともあります。そのような方に横取りされるリスクはあります。物件を取得することを重視する場合には、このような物件に対しては、必ずしも>手数料無料がおススメできない場合もあります。

購入を希望する消費者への弊害

専任返しは買取業者の仕入れが安くなる可能性がありますが、再販売価格が安くなるわけではないのには注意です。

物件が高くなる可能性

むしろ、第一の弊害は、物件が高くなる可能性です。専任の期間は、通常は期間は1~3ヶ月間程度ですが、仲介業者を専任にして売却のルートを絞れば、売却期間は掛かるようになるのが一般的です。つまり、売主は専任返しをするときには、売れないリスクを覚悟しているわけです。その分、専任の期間においては、価格を上乗せする場合があります。

仲介業者を選択できない

専任返しをしている期間において売り側の仲介業者が物件の囲い込みをすることがあります。このような場合には、買主は仲介業者を選択することができません。たとえば当社のような仲介手数料無料の業者を選択することはできません。あるいは、信頼している仲介業者を入れたい場合にも、選択できない場合があるのです。

売却を希望する消費者への弊害

専任返し取引で利するのはもともとの物件の仲介業者だけで、売主には、専任返しは弊害だけでしかありません。

売却先の選定に競争が生じない

仲介業者は「専任返し」を対応してくれる買取業者に、優先して卸す傾向があります。つまり特定の軽主に紹介先を偏在させてしまう傾向にあります。専任返しをしない業者は後回しになるわけです。

販売方法に縛りが出る以上、時間がかかることを想定しなければなりません。その分のリスクを取るため、買取業者は安く仕入れていることがあります。安く仕入れて高く売ろうとするのです。原初の売主さんの利益を害している可能性が懸念されます。しかし後日の値下げを想定して、売り出し価格は最初はあえて高めに設定してしていることも多いようです。仲介業者は買取業者に利益構造はよく把握していないので、このような対応も可能です。

精神的苦痛

専任返しは「特定の業者に売る」ことですから、「安く売らせるためにはめ込む」という前提に成り立つものです。安く売らせるためには安く売らせるなりのストーリーが必要です。具体的には囲い込みなどを用いた値こなし作業です。

この過程においては価格の下落を体験します。自宅の価格の下落に直面は、実際に体験してみると、身を削られるような気がします。これが非常に精神的にしんどいようです。

専任返しの見分け方

リノベーションマンションや新築一戸建てが「専任媒介」「専属専任媒介」で売り出されていることで、重要なポイントです。

これから売却をするお客様は、委託先の不動産会社のことについて調べて、販売されている物件の状況で、活動の姿勢やポリシーを察知しなければなりません。

なお大手不動産会社の場合は支店の状況を調べれば十分です。仲介会社は支店長や営業所長の姿勢が強く反映されるからです。

購入を検討されているお客様は、検討対象の物件のことを調べれば十分にわかります。

「取引態様」を見る

商品物件は新築の一戸建てやリノベーションマンションで行われますので、新築の一戸建てやリノベーションマンションの取引態様を確認しましょう。取引態様は物件概要・販売概要の一部に書いてあります。

専任返し

以上の画像のように>取引態様の部分で、「専任」「専属」の文字が書いてあれば、専任返しの可能性が高くなります。

ただし、わかりづらいのは、「仲介」「媒介」と書いてある場合です。これは「専任」「専属」「一般」のすべてに当てはまります。不動産サイトでも、suumoなどではすべて「仲介」でまとめているので、わかりづらいと思います。

以前は、取引態様の部分で、「一般」と書てあれば、専任返しの可能性は低かったのですが、一般媒介を活用した不動産の囲い込みが多くなってきており、一般媒介の専任返しという現象も増えてきています。

他の仲介会社の広告を確認する

売却を委託するとき、調べたい会社の専任物件が、複数の仲介会社から広告を出されているかどうか、確認しましょう。預かった物件を単なる利権と考えているところは、必ず単独しか広告が出てきません。その不動産会社へ売却を委託するのは、中止すべきです。

当社の場合ならば、売却を専任でお預かりすると、必ず他の不動産会社からも広告を出してもよいとリリースします。そうすると、販売物件が少な気味の業者さんから、広告を出してくれることがあります。

業者である売主は、本来、販売のルートを制限したくないので、複数の会社から出されることを希望します。それにもかかわらず、販売活動をしているのが限定1社の場合は、専任返しの物件です。

相手先に聞く

調査対象となる気になる物件について、買主の立場にて(買主のフリをして)対象となる不動産会社に電話をして、聞いてみましょう。

※※「○○マンションは御社の限定物件ですか? 専任物件ですか?」※※

通常の不動産会社なら、いわゆる「ドヤ顔」で「その通りです!」と答えてくれるはずです。しかし、これで専任返しの確定が確認できますので、営業姿勢に疑いを持つべきと言えるでしょう。

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この記事の作者

2010年から(株)ロータス不動産代表。ヤマト住建(株)等OB。宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター他。早稲田大(法)95年卒。在学中は早大英語会に所属。

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