不動産契約の「重要事項説明書」を実例で全部解説
重要事項説明書では、取引で理解すべき所定の事項が記載されています。分量はおおよそ15~20pで、時間にして1時間半~2時間くらいです。
重要事項説明は宅地建物取引士が作成し、説明を行います。法律的、建築的な経験がないと理解しづらいことも多く、買主が少しでも理解を進められるようにするためです。
所定や法定の事項のほか、「お伝えしないと後々マズいこと」は必ず各項目の「備考」と銘打った欄に記述します。備考に書いてあることの意味は押さえるようにしましょう。
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author:春日秀典
目次
- 1 重要事項説明の意義
- 2 取引に対応する不動産会社
- 3 売買物件の表示
- 4 売主の情報や登記の記載内容
- 5 法令上の制限
- 6 道路について
- 7 インフラ供給状況について
- 8 共有部分やマンション管理に関する事項について
- 9 建物状況調査の結果の概要
- 10 建築や維持保全の状況に関する書類の保存
- 11 新築時の建築確認について
- 12 耐震診断に関する事項
- 13 物件の形状や構造(宅地や建物)
- 14 宅地建物の存在する区域
- 15 アスベスト(石綿)使用調査の内容に関する事項
- 16 住宅性能評価を受けた建物
- 17 代金などに関する事項
- 18 代金以外に授受される金額
- 19 契約解除に関する事項
- 20 金銭の貸借に関する事項
- 21 担保責任の履行に関する措置の概要
- 22 手付金や預り金の保全措置
- 23 容認事項について
- 24 【番外】重要事項を作成するスキル
重要事項説明の意義
重要事項説明書とは不動産取引において、宅地建物取引業法にもとづき、物件の内容や、取引の条件などについて、必要な情報が記載された書面です。不動産の購入を検討する人は重要事項説明を聞いて、最終的に問題がないか確認していただき、契約をするかどうかを決めるというのが法律の趣旨です。
重要事項説明書の意義
慣れないはずですので、このページの解説を読むと、流れの理解ができるはずです。動画もありますので、お時間がない場合には動画を聞き流すだけでも、心構えの準備ができると思います。
この記事では実際に使用している書式を用いています。当社が購入時の仲介や売却の仲介で実際に用いている書式です。当社以外で契約される方も、業者さんは大体同じような内容ですので参考になるでしょう。
不動産契約における重要事項説明書は、売買契約書と並び、「1級扱い」で重要な文書です。ときどき、流して儀式のように説明する会社・営業マンがいるのも実情です。本来は、物件のリスクなどを理解するものための資料ですので、流すのはよくないことです。
当社の場合ですと、契約の事前にはかならず重要事項説明書の案文をお渡ししています。また、契約前の購入申し込みのころのタイミングで一件資料の重要な部分はお渡しして内容を説明してると思います。それぞれ事前に内容の確認していただくことができるでしょう。そのため、重要事項説明を行う現場で、驚くべき新たな事実はないと思います。
「聞いていない」を防止する
不動産のトラブルの多くは「聞いてない」といったものが多いのが実情です。とくに、シツコイ系の営業会社は一気にセールスを押し込むことがあるので、トラブルも多くなります。
そうした過去のトラブルをもとに、重要事項説明は宅地建物取引業法の35条に定めがあります。法律では、契約の意向が固まると、物件に関する重要な事項について、宅地建物取引士が説明をして、一件資料や設備表・状況報告書を用いながら、買主が納得いただいた上で契約をする流れになっています。
逆にいうと、重要事項説明を実施していなければ、契約をしてはいけません。重要事項説明で「初耳」を聞かされたのであれば、契約をやめることだって可能です。お客様におかれましても、単なるメンドウな儀式としてではなく、契約調印・契約書と同等の注意でご留意ください。
重要事項説明書は、記載内容についても国土交通省をはじめとした標準ひな型があり、不動産業界団体が制定する書式があります。
このような趣旨から、弊社では買主の購入の申込の提示して基本的な条件の合意後に重要事項説明の作成を開始し、売買契約の調印前に重要事項説明を行っています。
当社では、不動産売買契約にかかる時間のほとんどは、実は「重要事項説明」に充てます。早くとも2時間、長いと3時間半くらい、全集中「常中」の呼吸です。おかげさまでというべきか、何百回とお取引をさせていただいた中でも、説明不足のクレームは当社ではありません。
他社の重要事項説明を拝聴することもありますが、早い会社ですと1時間くらいで説明業務が終わるようです。特に案件が多い大手や、若い人の出入りが多い中堅の会社にはその傾向にあります。あっさりした説明では、後々の「言った」「言わない」を誘発しますので、憂慮すべきことかもしれません。
掘り下げた説明
購入の申し込んでから実際の契約までは、いくらかの時間があります。その間、お客様は住宅ローンの事前審査などの準備活動を行いますが、それと並行して、不動産業者では、重要事項説明のための調査・作成をしています。
物件の勧誘に力点を置くため、重要事項説明は「法律的な要件を満たしていればいい」と感じさせる業者も一部の業者ではあります。重要事項説明の間違った記載は、悪意や重過失であれば、法律違反です。新築分譲マンションでは、伝えるべき内容は全てのお部屋で同じになります。定型化された印刷物を利用しています。これはこれでありでしょう。
当社においては、物件のセールス段階では、いったん売主提供の情報を信頼してご説明しますが、購入申込以後は、売主提供の情報はゼロベースで見直します。おそらく、通常の良心的な不動産業者であれば、どこもそうしているはずです。
万々が一管理の内容や過去の事件・事故など、説明が足りない部分が仮にあったとしても、この調査で補完しています。当社では、あきらかに重要な情報が判明した場合は、契約の時期に係わらず、当社では認知し次第、ただちにお伝えしています。例えば、過去の告知事項、再建築に関わる事項などが該当します。また、しっかりとお考えいただき最終判断ができるようにすため、予習のための素材をお渡しするようにしています。そのため、理論上は、重要事項説明を受けた結果、購入を見送ることもあり得ますし、実際にそのようなことも起こります。
冒頭の注意書き
さて、重要事項説明書の冒頭は、まずは注意書きからです。お客様のお名前が書いてありますから、漢字に間違いがないか、確認をしてください。
宅地建物取引業法35条とは、購入希望の物件について、取引の相手方に対して、不動産業者が「重要事項説明」をすることを義務付けるものです。また、35条の2は営業保証金(後述)について説明することを義務づけるものです。
重要事項説明書では、気になる事項・伝えるべき事項について、かならず備考で言及しています。不動産に従事している人は、慣れてくるとまず備考から読み始めるようになります。定型の部分は事実しか記入していませんので、良いも悪いもありません。
注意書き以降、いよいよ本題に入ります。重要事項説明では、買主であるお客様は、ご遠慮なくご質問をされることが重要です。主な内容は以下の通りです(そのまま目次になっています)。
取引に対応する不動産会社
「取引に対応する不動産会社」について動画で説明しています。
不動産会社について
まずは関与する宅地建物取引業者(不動産業者のことを正式には「宅地建物取引業者」といいます)、ならびに宅地建物取引士の紹介をおこないます。業者は取引内容と取引の立場が記載されます。このケースで言うと、(株)ロータス不動産は売買に仲介として参加しています。シロクマリアルエステート(株)は売買に売主として参加しています。
なおこのケースでは2社が関与していますので2社の情報を記載していますが、1社のみの場合は1社のみの記入ですし、共同仲介や共同業務にあたる場合は、すべての会社を記載します。
重要事項説明は資格があるものが行わなければなりません。具体的には宅地建物取引士です。また、資格のある証拠として、「宅地建物取引士証」を見せなければならないことになっています。冗談のようで本当かどうかわからないのですが、聞いた話では、もぐりの業者は「運転免許証」などを見せている場合もあるそうです。注意しましょう。
供託所等について
次に供託の説明です。実は、不動産業者には、不動産取引の不測の事態に備えて、消費者保護のために金銭を預ける義務があります。それが営業保証金です。
供託すべき金額は、本店1000万円、支店1か所につき500万円×支店数の合計額です。しかし、実際には1000万円という金額は重かったりするので、保証協会の会員になり分担金を負担して、保証協会から保証を受けるシステムが確立しています。そして保証協会が宅建業者に代わって保証金を供託することで、営業保証金と同様の取り扱いを受けることができます。保証金として納付すべき金額は、本店60万円、支店1か所につき30万円×支店数の合計額です。
供託金や保証金から還付を受けることができるのは、不動産取引に関連する損害、業者から物件を購入したことによる損害です。広告代金、社員の給料、購入した文具などは保証の対象外です。たとえば、建物を建設中に、まだ骨組みの段階で、業者が夜逃げした場合に還付する手付金などです。その意味では、建物が既に存在している中古住宅の売買やなどは、一段安全な取引と言えると思います。
売買物件の表示
売買物件の表示では、これから取引をしようとする不動産を特定し、その概要を説明します。気になることがあれば、それについても備考で説明します。
「取売買物件の表示」について動画で説明しています。
土地・敷地について(概要)
地図、謄本、公図なども活用しながら、場所の再確認をします。
ここでは、住所のようなものが2つ記載されています。「住居表示」と「所在・地番」の2つです。は「住居表示」は、郵便物が届いたり、住民票の登録を行う住所で、実際に生活に用いる住所です。住居表示は地域の中心となるエリアで実施されていることが多いです。
地番とは、土地の場所を特定するもので、法務局で振り出しています。住居表示が実施されていない地域では地番が生活上の住所の機能も有しています。
建物について(概要)
土地の次は建物です。販売図面なども活用しながら、建物についての特定情報を再確認をします。所在、面積、構造、階高・階数など、概要情報も説明します。
マンションの場合は建物全体と一戸の部分の説明となります。一戸建ての場合は一棟の建物についての説明となります。
ここで、家屋番号というものがあります。これも住所のように見えますが、住所ではありません。家屋番号とは、法務局が不動産登記法上の建物に付する番号であり、一つ一つの建物を識別するための番号、いわばコードナンバーです。
家屋番号は建物の識別番号のことです。表札で用いる部屋番号とは一致するとは限りません。これに対して、部屋番号は「建物の名称」というところと一致させること通常です。マンションの場合、法律上は一つの区分された所有権の部屋でも「建物」という言い方をします。
売主の情報や登記の記載内容
かいつまんで動画でご説明しています。
売主に関する事項
取引の売主の情報を確認します。事例のケースでは社名変更により登記簿謄本に記載する内容が違いますので説明しています。
第三者による占有
第三者による占有とは取引の当事者以外の人による占有を指します。よくありがちなのは、投資用の賃貸中のマンションの売買などでしょうか。もちろん、親族による使用貸借もあります。いづれも事実の状態を説明します。事例ではなにも記載がないので、第三者による占有はないことがわかります。
登記記録に記載された事項
「登記記録に記載された事項」では、登記簿と照らし合わせながら、登記記録の事項を内容を確認します。重要事項説明書では、原則、登記簿の内容をそのまま転記しています。
日付も重要です。売買契約の当日(土日の契約の場合は直前の営業日)の情報を確認したいところです。登記記録には土地と建物の2種類が存在します。
土地、建物とも、登記簿謄本には甲区と乙区という項目が存在しますので、それぞれ確認します。
甲区
甲区には所有権に関する事項が記載されます。重要事項説明書では現在の事項を説明していますが、登記簿謄本の原本をみると、それまでの所有者のヒストリーが取得した日や取得した原因などとともに、把握できます。
甲区でたまに見られるのが「差し押さえ」などの項目ですが、これも所有権に関する事項ですので、甲区に記載されます。
乙区
これに対して乙区には所有権以外の情報が記入されます。代表的なのは「抵当権」ですが、このほかにも「地上権」「地役権」「小作権」「質権」(「賃借権」)などの権利が記載されます。所有権以外の事項も順位番号に従いながら、日時や原因がは確認できます。
事例のケースでいうと抵当権ですが、抵当権の設定日時、債権額、債権者など、抵当権の内容の大まかな事項が掲載されてます。これにより、次のこの物件を買う人は「いくらの抵当がついているんだな」ということがわかるようになります。抵当権が抹消できるかどうかは、買主にとって重大な関心事です。
敷地権とは?
この事例では「土地」の項目では「敷地権につき建物と一体」とのみ記入されていて、詳しい情報が省略されています。
敷地権とはマンションに特有の権利名称です。マンション取引の手続きを簡略なものするため、土地と建物が分離不能なとしてものとして登記された権利のことをいいます。
登記の公信力と公示力
ちなみに言うまでもありませんが、登記簿に書いてある内容は非常に重要です。なぜなら、登記に記載されていることが正しいと推定されるからです。
実は、日本の法律では、不動産を取得しても必ずしも登記をする義務はありません。そのため、相続や贈与では登記をしないでほうっておくという事態もありえます。しかし、これまでの判例の積み重ねで、もし裁判で矛盾するような証拠が2つでてきたら、登記されている情報を信頼するようになっています。これを法律的には、「公信力がないものの、公示力はある」と言います。
このような記録を誰でも閲覧できるように体制を整えると、登記されている内容に信頼性をもたせることが可能です。そうすると、登記の内容を信頼した当事者を保護できます。ひいては取引の安全な推進することが可能となり、資本主義が守られるようになる・・・と言っても過言ではありません。
法令上の制限
「法令上の制限」では、建物を建築する場合の規制に関する法律を中心に説明をします。「法令上の制限」は、土地から新築をされたい方の場合には、非常に重要な意味を持ちます。現行の放棄に基づいて完成した物件であれば、近隣に立つ可能性がある建物の説明となります。
まずは、かいつまんで動画でイメージをお話します。
検査済証(後述)が出ている限り違法建築ではありません。中古マンション、新築・中古の一戸建てでは、あまり緊張をせずとも、おおむね「同じような建物ができる」というご理解で、よいかと思います。
都市計画法について
都市計画法の説明は、地域を発展させていく方針かの説明です。宅地開発の概要、都市計画道路、市街地開発事業などが該当します。
このうち、当社のお客様で目にする機会が多いのは、1)開発行為 2)都市計画道路かと思います。
- 開発行為
- 開発行為とは建築物の建築などのため、土地の区画や形質の変更を言います。具体的に言うと、大規模分譲地で道路(区画の変更)を作ったり、農地を宅地に変更(形質の変更)したりすることです。官公署の許可が必要です。
- 都市計画道路
- 都市計画道路とは、都市計画法に基づく整備予定の道路のことをいいます。道路は突然できるものではなく、計画が確定する前の何年も前から、「原案作成」や「説明会」というプロセスを通して案をつくっていき、最終的に市区町村・都道府県役所が整備計画を公表しています。計画が確定した段階の状態を「計画決定」といいます。案が作成されてからも何年、あるいは何十年もかかる事業です。具体的に道路を建設するため、土地の買収などを行う段階に入った時には「事業決定」と称されます。事業決定に入ると数年~10年くらいで、道路の完成を想定できるようになります。
建築基準法の制限について
実は、建物は自由になんでも建築できるわけではありません。低層住宅の地域は低層で、商業エリアでは高い建物が建ちます。
建築物の所在地や使用目的に応じて、敷地・設備・構造・用途について、いろいろと制限があるからです。その最低基準となる法律が建築基準法です。主な規制の種類は用途地域、地域・地区・街区、建ぺい率・容積率などがあります。
東京をはじめとする地域で気にすべきものについて、説明を区分けます。
用途地域
用途地域とは、その地域ごとに想定する主な建物の使用方法の想定です。例えば「世田谷区深沢の閑静な住宅地」のど真ん中に大型スーパーはできません。銀座四丁目の交差点の前に平屋の一戸建てはできません。これらはすべて土地の利用方法について大まかな規制があるからです。
第一種低層住居専用地域 | イメージは閑静な戸建住宅地です。低層住宅の良好な住環境を守るための地域です。(床面積の合計が)50m²までの住居を兼ねた一定条件の店舗や、小規模な公共施設は可能です。商店は小規模な店舗兼用住宅のみでコンビニも不可です。 |
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第二種低層住居専用地域 | イメージは戸建て住宅のみの住宅地にポツリとコンビニなどの小規模店舗がある地域です。主に低層住宅の良好な住環境を守るための地域です。150m²までの一定条件の店舗等が建築可能です。 |
第一種中高層住居専用地域 | イメージは3階建て以上のアパートやマンションの住宅地や小規模なスーパーマーケットなどで、中高層住宅の良好な住環境を守るための地域です。500m²までの一定条件の店舗等が建築可能です。中規模な公共施設、病院・大学なども建築可能です。 |
第二種中高層住居専用地域 | イメージは3階建て以上のアパートやマンションの住宅地や小規模なスーパーマーケットに加え、やや広めの店舗・事務所などがあるものです。主に中高層住宅の良好な住環境を守るための地域です。1500m²までの一定条件の店舗や事務所等が建築可能です。 |
第一種住居地域 | イメージはマンション、密集した住宅地、中規模のスーパー、小規模のホテル、中小の運動施設、中規模の店舗・事務所などがあるものです。住居の環境を保護するための地域です。3000m²までの一定条件の店舗・事務所・ホテル等や、環境影響の小さいごく小規模な工場が建築可能です。 |
第二種住居地域 | イメージはマンション、密集した住宅地、郊外の駅前や幹線道路沿いなど。大きめのスーパーや商業店舗・事務所などがあるものです。主に住居の環境を保護するための地域です。10000m²までの一定条件の店舗・事務所・ホテル・遊興施設等や、環境影響の小さいごく小規模な工場が建築可能です。 |
近隣商業地域 | イメージは商業施設・事務所のほか、住宅・店舗・ホテル・遊興施設等のほか、映画館、車庫・倉庫、小規模の工場がある地域です。近隣の住民が日用品の買物をする店舗等の、業務の利便の増進を図る地域です。それなりの商店街のイメージです。小さな商店街のほか、中規模以上の商業施設もありえます。延べ床面積規制が無いため、場合によっては中規模以上の建築物が建ちます。 |
商業地域 | イメージは、中心部の繁華街やオフィスビル街などです。主に商業等の業務の利便の増進を図る地域です。ほとんどの商業施設・事務所、住宅・店舗・ホテルや小規模の工場のほか、性風俗系も可能です。延べ床面積規制が無く、容積率も高いため、高層ビル群も建築可能です。工場関係以外はほぼ何でも建設可能です。 |
準工業地域 | イメージは町工場で、主に軽工業の工場等、環境悪化の恐れのない工場の利便を図る地域です。住宅や商店も建てることができます。ただ、コンビナートのような危険性・環境悪化のおそれが大きい工場は不可です。 |
工業地域 | 主に工業の業務の利便の増進を図る地域です。どんな工場でも建築可能です。住宅・店舗は建築可能です。学校・病院・ホテル等は建てられません。 |
準住居地域 | イメージは、国道や幹線道路沿いなどで、宅配便業者や小規模な倉庫が点在するような場所です。道路の沿道等において、自動車関連施設などと、住居が調和した環境を保護するための地域。10000m²までの一定条件の店舗・事務所、映画館、車庫・倉庫や、環境影響の小さいごく小規模な工場も建築可能です。 |
田園住居地域 | イメージは農村です。農地や農業関連施設などと調和した低層住宅の良好な住環境を守るための地域。ビニールハウスなどの農産施設のほか、500m²までの農産物の販売所も建築可能です。具体例としては、農産物直売所・農家レストランを中心とした地域です。それ以外は第二種低層住居専用地域に準じています。 |
工業専用地域 | イメージは京浜や京葉の工業地帯です。工業専用地域は工業の業務の利便の増進を図る地域。どんな工場でも建築可能です。住宅・物品販売店舗・飲食店・学校・病院・ホテル等は建てられません。住宅が建設できない唯一の用途地域で、福祉施設も不可です。 |
地域・地区
「地域地区」とは土地利用に関する一定の規制などをいいます。滝多様にわたる制限があります。重要事項説明書では20以上におよぶ規制を列記しています。ここでは、よく見かけるものについて、記していきます。
- 防火地域
- 火災の危険を防除するため定める地域地区
- 準防火地域
- 火災を防止するために比較的厳しい建築制限
- 新たな防火規制区域
- 建築物の耐火性能の強化と不燃化を促進するための東京都の制限
- 建築基準法第22条区域
- 上記の防火地域・準防火地域外の市街地で設定されることが多い防火制限。
- 高度地区
- 土地利用の増進を図るため、建築物の高さの最高限度又は最低限度を定める
- 高度利用地区
- 土地の高度利用と都市機能の更新を図る。容積率の最高・低限度、建ぺい率の最高・最低限度、壁面の位置の制限を定める。
- 景観地区
- 建築物の形態・意匠の制限
- 風致地区
- 都市の自然の風致を維持するため指定される地区。建物の敷地、構造または建築設備に関する制限。
- 地区計画区域
- 区域の特性に応じて市町村が定めるきめ細かな計画。
- 駐車場整備地区
- 主に商業地域で駐車場を確保するために自治体で指定する地域。
- 建築協定区域
- 土地所有者などが自主的に建築物や建築設備に関する基準について定めた協定だが、法的な拘束力を持つ。建築協定書を作成し、特定行政庁の許可を受ける。
建ぺい率・容積率
敷地面積に対いて建物にはサイズの制限があります。それが建ぺい率・容積率です。
建ぺい率とは敷地面積に対して、建築面積(1階部分に相当する面積)が、どれだけの割合で占めていいかを表すものです。
容積率とは、敷地面積に対して何倍の延床面積を建築していいかの割合です。
壁面線の制限・外壁後退
壁面線の制限とは、道路境界線から後退する距離の制限です。街並みを揃えてきれいな景観にすることを目的としています。地区計画等で記述されています。壁・柱及び高さ2mを越える門・塀に関しては、原則、壁面線を越えて建築を行うことはできません。
これに対して、外壁後退とは、外壁を後退させなければならない制限です。都市計画法で規定されています。道路だけでなく隣地も含めて後退させなければならず、後退距離は敷地境界線から距離は1mまたは1.5mが限度です。第一種・第二種低層住居専用地域や各地域の地区計画などで設定される場合があります。
敷地面積の最低限度
細切れに狭苦しい環境にしないため、敷地の細分化を抑える制限です。この制限が課されると敷地を一定規模より細分化して建築することができません。なお、最低限度が制定された時期以前に、すでに最低限度を下回っていた土地は救済されます。
建物の高さの制限
よく、建物の屋根が斜めになっていたり、マンションの外観が段々になっている場合があります。これは斜線制限の影響です。斜めに線が伸びているので斜線です。
- 道路斜線
- 路の反対側の境界線から生じる制限
- 北側斜線
- 北側の敷地から生じる制限。日照の悪化を防ぐため。低層住居専用地域で設定される。
- 高度地区
- 北側の敷地から生じる制限。日照の悪化を防ぐものだが北側斜線よりも緩い。
- 隣地斜線
- 敷地境界から生じる制限。高さは20mもしくは31mから始まる斜線であり、低層住居専用地域では設定されない。
- 日陰規制
- 日影による中高層の建築物の制限。日影が生じてもよい時間を制限。
- 絶対高さ制限
- 低層住居専用地域で規定される高さの上限です。12mもしくは10m。
自治体関連の条例について
地域の特性に応じて建築物の安全、防火、衛生の目的のため自治体は条例による制限を付加する場合があります。
(特種建築物の)安全条例、中高層紛争予防条例、景観条例などがあります。
その他法令に基づく制限について
建築基準法・都市計画法以外の法令に基づく制限で、敷地に対する制限が影響する国の法令について説明します。列記されているのは画像の通りです。
東京・首都圏でよく見かけるものについて簡単に説明します。
土地区画整理法 | 土地区画整理事業に関して、施行者、施行方法、費用の負担等必要な事項を規定。 |
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宅地造成等規制法 | 宅地造成工事規制区域内での宅地造成工事に関する工事の規制。 |
河川法 | 河川の管理のための規制 |
文化財保護法 | 文化財を保護のための規制。遺跡がある地域の掘削などで影響します。 |
航空法 | 航空機の航空の安全及び航空機の航空に起因する障害の防止を図るための規制。高さ制限に影響します。 |
景観法 | 良好な景観の形成のため、景観行政団体は「景観計画」を定めることができます。 |
土壌汚染対策法 | 土壌汚染対策の実施のための規制。 |
水防法 | 水災の被害を軽減することを目的に定めた法律。ハザードマップの作製に影響をしています。 |
道路について
有効な避難路を確保するため、都市計画区域内の建物では接道する義務があります。「幅員4m以上の建築基準法上の道路に、間口が2m以上接道していないと家は建てられない」という義務です。道路は不動産の価値に重要な影響を及ぼします。不動産とは道路であると言っても差し支えないほどです。
敷地と道路との関係
「道路のように見える土地だが道路ではない」ということは、まれにあります。そこで「敷地と道路との関係」の項目で、敷地の周りの道路の位置付けを明らかにします。敷地が道路と接していない場合は大ごとです。
敷地と接する道路の公道・私道の別、建築基準法での道路種別、幅員・接道長さを記し、図示します。
ちなみに建築基準法に適合しない道路は、その旨を記述します。「通路」などと呼んだりします。
私道について
敷地が私道のかかわりがある場合、私道に関する記述を行います。取引対象に私道の持分がある場合、その概要を記して内容を伝達します。
取引対象に私道の持分がなくとも私道とのかかわりがある場合には、関連する私道の概要を記載します。接する道路が私道のみだと、少し慎重に確認する必要があります。
インフラ供給状況について
配管の設置状況について説明します。配管の設置状況とは、電気・ガス・水道・下水道(排水・雨水)の設置状況のことです。どのような配管があり、設置者・管理者が誰なのかを確認します。
事例はマンションですので非常にシンプルに記述しています。
前面の道路に配管が通っているかどうかは、利活用にあたり、大変重要なポイントとなります。とくに土地・一戸建てでは極めて重要な項目です。都内では、前面には配管がない物件は、そうそう存在しないと思いますが、地域によっては配管がない物件もあると思います。配管の位地が非常に遠方で実質的に配管がとれないとなると、莫大な費用となりかねません。
排水方法も大切です。汚水の排水は維持管理の上で、雨水の排水は安全性の上でも確認が重要です。
共有部分やマンション管理に関する事項について
配管インフラなどの説明のあとは、管理体制や共用部分などの情報です。共有部分はマンションのみの情報ですので、一戸建てや土地を検討されている方はこの部分は飛ばしてください。
共有部分に関する規約の定め
この段落では、管理規約の記述に基づき、共有部分の定義と共有部分の持分の状況などを説明します。
共有部分の定義とは、裏返すと、「建物のどの部分を専有部分として扱うか」という問題です。新しいマンションでは、配管などは、具体的な記述がされている場合があります。
少し古いマンションでは専有配管について具体的な明記をされていることは少ないですが、判例では自己の支配が可能な、躯体から飛び出している部分とされているようですね。
なお、共有部分の持分は日常の生活では意識することは少ないと思います。管理費改定時の負担割合、建替えの負担割合などのほか、敷地を売却した場合の受益の割合などに影響します。
専有部分の用途その他利用の制限に関する規約の定め
わかりやすくいうと、マンションの利用ルールの中でも焦点となる「建物用途」「ペット」「リフォーム」「楽器」について、管理規約の記載を抜粋したダイジェストです。
マンションの場合、通常の建物用途は「住宅」だと思いますが、事務所・店舗など、他の利用法が許容されている場合はその旨も記述されます。民泊の可否についてもこのあたりに記述しますが、いまは、通常のマンションは不可がほとんどです。
専用使用権に関する規約の定め
マンションのなかの専用使用権の説明、専有部分に付属する専用使用権の説明を行います。専用使用権とは、分譲マンションにおいて、ある特定の区分所有者が排他的に使用できる権利です。バルコニーや専用庭に設定されています。専用庭の一部が駐車場になっている場合や、店舗前面部分に多くあります。該当区分所有権がある限り使えるのが一般的です。管理規約にて規定します。専用使用権を消滅させるには管理規約の変更が必要です(4分の3の特別決議)が、該当の区分所有者の承諾が必要なため、実質的に永久使用となります。
マンション全体においては、当社では、駐車場や駐輪場の空き状況や利用料なども同時に説明しています。
専有部分において、専用使用で話題になるのは、「ルーフバルコニー」「庭」などです。物件によっては「駐輪場」「駐車場」なども専用利用できますので、そのような場合には費用などとともに確認できます。
所有者が負担すべき費用を特定の者のみに減免する旨の規約
管理規約などにおいて「管理費をまけている」対象があれば、その点を記述します。滅多に記述することがない部分ですが、全くないわけでもありません。「建設時の土地提供者である」「市区町村が区分所有権を有している」などの場合、出てきたことがありました。
計画修繕積立金等に関する事項
修繕積立金の概要が確認できます。毎月の積立金の額、専有部分の滞納額、修繕積立の貯金の総額、全体の滞納額がわかります。
借入金があったり、値上げの予定が明確であればこの部分に記述されます。
通常の管理費用の額
管理費の概要が確認できます。毎月の管理費の額、専有部分の滞納額、全体の滞納額がわかります。修繕積立金や管理費以外の課金、滞納額があればこちらでも案内してます。
管理の委託先等
管理会社などの情報です。これらの連絡先は入居時の連絡でも使用されることもあり、生活上でも重要な意味を持ちます。自主管理の場合にもその旨記載され、理事長など主な連絡先をご紹介します。
建物の維持修繕の実施状況の記録
大規模修繕などの情報があれば、この部分で実施状況を伝えます。修繕の記録が何もないというのも珍しいものですが、築年数が新しい物件ではしばしばあります。あわせて専有部分の情報もお伝えしています。
その他
定型部分に収まらないものの、気づいた部分や伝えるべき部分は、「その他」でお伝えします。
建物状況調査の結果の概要
建物状況調査とは、いわゆる「インスペクション」というものです。
インスペクションとは住宅検査のことです。不動産業者は取引の専門家ですが建物の専門家ではありませんので、建物の劣化の状況について、正確な意見を提供できない場合があります。そこで、建築士等の資格を持った検査員が点検を行うサービスがあります。
点検は義務ではありませんので実施をしていない場合もありますが、ここでは、点検の履歴の有無と概要について明らかにします。
建築や維持保全の状況に関する書類の保存
建築や管理の状況を確認できる書類の有無を紹介します。こちらは原本を保管しているかという意味です。管理組合・管理会社などに保管状況を確認します。
古い物件になると建築確認済証、検査済証の原本の保管はされていないこともあります。
「建築基準法第12条の規定による定期調査報告」については、調査をしていない情報に遭遇したら気にすべきかと思います。定期調査報告の原本の保管はなくても、概要の報告の有無を含め確認すべきです。なお、一定の規模以下のマンションでは定期調査報告は免除されます。
新耐震か否かについても情報適用をします。耐震性についての書類は後述の耐震診断の状況もあわせて内容を確認できます。
新築時の建築確認について
こちらは新築時の建築確認や完了検査の状況を紹介するものです。都道府県や市区役所で管理している建築確認番号、完了検査番号、日時の有無を確認します。完了検査の番号が存在すれば、竣工当時は適法に処理された物件であると確認できます。
こちらは新築時の建築確認や完了検査の状況を紹介するものです。都道府県や市区役所で管理している建築確認番号、完了検査番号、日時の有無を確認します。完了検査の番号が存在すれば、竣工当時は適法に処理された物件であると確認できます。
中古マンションで建築確認の番号が存在しない物件は、高知の沢田マンション以外で聞いたことはありません。検査済証番号がない物件はまれにですが存在します。適法に処理された物件か、気にすべきところです
中古の一戸建てで検査済証の番号がない物件は、平成11年の『住宅の品質確保の促進等に関する法律』以前なら、しばしばありました。このような時代背景のため、この記事を書いた時点では、検査済証の番号がない物件も流通性はあると思います。ただ、建ぺい率・容積率オーバーなど、適法に処理された物件かどうかは確認できないため、将来流通性がなくなるリスクは気にすべきところかもしれません。
耐震診断に関する事項
新耐震・旧耐震の情報をお伝えします。管理組合・管理会社・物件オーナーに確認するとわかります。市区町村で情報を把握している場合もあります。なお、このサンプルは新耐震ですので、昭和56年6月以降の物件であるとお伝えしています。
旧耐震であれば、旧耐震である旨をお伝えし、耐震診断の実施の有無をお伝えします。ただし、耐震診断を実施していない物件も、まだそれなりの多いのが実情です。
耐震診断をしていれば耐震性能についてわかりますので、当社の場合では、その結果について認識した情報を明記しています。
物件の形状や構造(宅地や建物)
未完成物件の場合にはその旨を明確に伝えます。未完成物件とは新築の建売や造成中の土地が該当します。法的には「建築確認は出ているが検査済みではない」状態を指します。投資家や遠隔地の居住者など、物件を見ないで買う方もいますので、その方々向けに情報を明確にします。
資料は売主さんから徴求して、「物件情報を特定するための建築確認の写し」「形状を確認するための図面」「仕様書」などでご説明します。
ただ、実際には、現地見学に前後して資料をお渡ししていると思います。重要事項を行うときに、膨大な情報を急に説明を行うということはないはずです。
宅地建物の存在する区域
宅地建物の存在する区域の項目では災害で気にすべき点について説明します。
区域の指定について
宅地建物の存在する区域として、まず手始めに区域指定について説明します。
- 造成宅地防災区域
- 造成された一団の宅地のうち、地震等によって地盤の滑動などの災害が発生する恐れが大きいとして指定される区域
- 土砂災害警戒区域・特別警戒区域
- 土砂災害警戒区域とは住民等の生命・身体に危害が生ずるおそれのあると認められた土地の区域です。通称「イエローゾーン」。土砂災害特別警戒区域とは、建築物に損壊が生じ、住民等の生命または身体に著しい危害が生ずるおそれのあると認められる土地の区域です。。通称「レッドゾーン
- 津波災害警戒区域
- 3.11の反省から告知されるようになった区域です。令和3年の時点で首都圏ではまだありませんが、「津波浸水想定」がされている地域はあります。
ハザードマップ
ハザードマップは平成27年の水防法改正により、国、都道府県又は市町村は想定し得る最大規模の降雨・高潮に対応した浸水想定を実施し、市町村はこれに応じた避難方法等を住民等に適切に周知するためにハザードマップを作成することが必要となったので、そこで得られる情報を重要事項説明でも説明しています。
当社では、該当する部分を図面で示してご案内して、該当する地点の状況を書面でも記述して説明しています。水防法の改正以前のマップしかない場合でも、あるものについては説明しています。
なお、国土交通省では「ハザードマップポータルサイト」というのを作成しています。我々不動産業者、宅地建物取引士も閲覧しています。地形、災害、地盤関連の情報が山盛りで便利なのでご紹介します。
『ハザードマップポータルサイト~身のまわりの災害リスクを調べる~』
https://disaportal.gsi.go.jp/
水災害履歴や液状化予測
各市区町村では「水災害履歴」の情報を蓄積していますので、この情報をお伝えします。また、東京都では「液状化予測」を発表しているので、これも説明します。これらは、とりあえず宅地建物取引業法の義務ではありませんが、関連する情報として理解しやすいので説明をしています。
皆さんご承知の通り、東京では皇居からみて東と北のエリアだったり、川岸のエリア(大中小河川いづれも)は、どちらかというと厳しめ情報がが多くなります。
アスベスト(石綿)使用調査の内容に関する事項
アスベストの使用状況はマンションの場合は管理会社もしくは管理組合に確認します。一戸建ての場合はオーナーに確認しますが、かなり多くの建物では使用の状況は不明というのが実情のようです。
アスベストは耐久性、耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性などの特性に優れ、安価であるため、幅広く建築材に使用されてきましたが、健康被害に影響を及ぼすことが指摘されるようになり、順次、使用されなくなりました。
ただし、固定化されたものは日常生活の中で飛散することはないとされています。
吹付のアスベストは、日本では1975年9月には使用が禁止されるようになりましたが、調査をした物件の情報を確認してみると、成形品としてパネルなどに利用されていることは平成築の建物でも見られます。混入した製品の利用も2006年(平成18年)9月以降、原則禁止になっています。
住宅性能評価を受けた建物
住宅性能評価の趣旨
住宅性能表示制度は平成12年4月施行の「住宅の品質確保の促進等に関する法律(以下「品確法」という。)」に基づく制度で、 色々な工法があってよくわかりづらかった部分もありましたが、物件購入の際、住宅を比較しやすくするような趣旨で作られました。評価された性能の程度にもよりますが、保険料の割引がある場合や、住宅ローンの優遇がある場合があります。
性能評価の「性能」
等級が高い建物は優良な建物とは言えますが、等級が低いといっても建築基準法が求める性能は満たしていますので、劣悪な建物ということではありません。
例えば、耐震等級1は、数百年に1度程度の、極めて稀に起こる地震の力に備えた耐久性があり、等級2はその1.25倍、等級3はその1.5倍の力に耐えることが可能です
劣化の等級では等級1が建築基準法に定める対策、等級2が構造躯体が2世代(50年~60年)もつ程度の対策、等級3が構造躯体が3世代(75年~90年)もつ程度の対策とされます。
住宅性能表示事項
新築住宅の性能を評価・表示する事項は10項目があり、必須事項の4項目と選択事項の6項目があります。
必須事項
カテゴリー | 性能表示事項 | 性能表示事項の説明 | 表示の方法 |
---|---|---|---|
構造の安定に関すること(必須) | 耐震等級 (構造躯体の倒壊等防止) |
地震に対する構造躯体の倒壊、崩壊等のしにくさ | 等級(1~3) |
耐震等級 (構造躯体の損傷防止) |
地震に対する構造躯体の損傷(大規模な修復工事を要する程度の著しい損傷)の生じにくさ | 等級(1~3) | |
耐風等級 (構造躯体の倒壊等防止及び損傷防止) |
暴風に対する構造躯体の倒壊、崩壊等のしにくさ及び構造躯体の損傷(大規模な修復工事を要する程度の著しい損傷)の生じにくさ | 等級(1~2) | |
耐積雪等級 (構造躯体の倒壊等防止及び損傷防止) |
屋根の積雪に対する構造躯体の倒壊、崩壊等のしにくさ及び構造躯体の損傷(大規模な修復工事を要する程度の著しい損傷)の生じにくさ | 等級(1~2) (多雪区域のみ) |
|
地盤又は杭の許容支持力等及びその設定方法 | 地盤又は杭に見込んでいる常時作用する荷重に対し抵抗し得る力の大きさ及び地盤に見込んでいる抵抗し得る力の設定の根拠となった方法 | 地盤又は杭の許容支持力等及びその設定方法の明示 | |
基礎の構造方法及び形式等 | 直接基礎の構造及び形式又は杭基礎の杭種、杭径及び杭長 | 基礎の構造方法及び形式等の明示 | |
火災時の安全に関すること(必須) | 感知警報装置設置等級 (自住戸火災時) |
評価対象住戸において発生した火災の早期の覚知のしやすさ | 等級(1~4) |
脱出対策 (火災時) |
通常の歩行経路が使用できない場合の緊急的な脱出のための対策 | 該当する脱出対策等の明示(3F以上のみ) | |
耐火等級 (延焼のおそれある部分[開口部]) |
延焼のおそれのある部分の開口部に係る火災による火炎を遮る時間の長さ | 等級(1~3) | |
耐火等級 (延焼のおそれある部分[開口部以外]) |
延焼のおそれのある部分の外壁等(開口部以外)に係る火災による火熱を遮る時間の長さ | 等級(1~4) | |
劣化の軽減に関すること(必須) | 劣化対策等級 (構造躯体等) |
構造躯体等に使用する材料の交換等大規模な改修工事を必要とするまでの期間を伸長するため必要な対策の程度 | 等級(1~3) |
維持管理への配慮に関すること(必須) | 維持管理対策等級 (専用配管) |
専用の給排水管及びガス管の維持管理(清掃、点検及び補修)を容易とするため必要な対策の程度 | 等級(1~3) |
必須事項
温熱環境に関すること | 省エネルギー対策等級 | 暖冷房に使用するエネルギーの削減のための断熱化等による対策の程度 | 等級(1~4) |
---|---|---|---|
空気環境に関すること | ホルムアルデヒド対策(内装) | 1,居室の内装材からのホルムアルデヒドの放散量を少なくする対策 | 内装に使用する材の明示 |
2,居室の内装材として使用される特定木質建材からのホルムアルデヒドの放散量の少なさ | ホルムアルデヒド放散等級(材料毎に1~4) | ||
全般換気対策 | 住宅全体で必要な換気量が確保できる対策 | 該当する全般換気対策の明示 | |
局所換気設備 | 換気上重要な便所、浴室及び台所の換気のための設備 | 各所毎に、該当する設備の明示 | |
光・視環境に関すること | 単純開口率 | 居室の外壁または屋根に設けられた開口部の面積の床面積に対する割合 | 単純開口率の数値表示 |
方位別開口比 | 居室の外壁または屋根に設けられた開口部の面積の各方位毎の比率 | 方位別開口比の数値表示 | |
高齢者等への配慮に関すること | 高齢者等配慮対策等級(専用部分) | 住戸内における高齢者等への配慮のために必要な対策の程度 | 等級(1~5) |
<選択事項> 音環境に関すること |
透過損失等級 (外壁開口部) |
居室の外壁に設けられた開口部に方位別に使用するサッシによる空気伝搬音の遮音の程度 | 等級(1~3) |
代金などに関する事項
この項目以降は契約に関する条件に話題を移します。契約条件に関するもので一番最初に出てくることは、代金などの確認です。
消費税付きの物件の場合は内訳である消費税と建物価格も明記しています。
ちなみに「交換差金」とは建物の交換を行う際の評価額の差額です。筆者は目にしたことがありません。地代とは借地である場合の借地料のこですが、通常の売買では記載されません。借地権者と借地権設定者との取引の場合にはここに記載します。借地権付きのマンションの一室を買う場合には「借地説明書」という別途資料を提供して、それを用いて概要を説明します。
代金以外に授受される金額
この項目では代金以外で売主買主で授受する金銭を確認します。
手付金
手付金は、実際の業務では代金の先行払いとして扱われていますが、法的には少し違います。売買契約が成立する時点では、法的には「証拠金」としての扱いとなっています。最終決済時に、残代金に繰り入れられるという扱いとなっています。
「証拠金」とはどういうことか厳密に申し上げると、手付金は「解約手付」といいます。法律でいう「解約手付」とは、契約を解除したい場合に手付金相当の金額を交付(買主の場合は手付金を放棄することにより、売主の場合は手付金を買主に倍返しすること(手付倍返し)すること)により、で契約の解除ができるとした性質の手付のことです。言い換えるなら、身銭を放棄することで契約を解除することができる、本当のvery final thinking timeといえます。
清算金
不動産の維持管理には、固定資産税等の税金やマンションの場合は管理費・修繕積立金などが課金されます。このような、不動産の維持管理に当然必要なお金を、日割にて精算します。これが清算金です。このほか地代、自治会費、庭・ルーフバルコニー利用料などが清算対象となります。
管理費は上記の画像の例のように、当月と翌月(翌々月)を精算にすることが多いです。これは管理会社の移行手続きを踏まえて、あらかじめ楽にするための慣例です。
なお、水道光熱費などは精算対象とはしていません。また、必ず課金されるものを除き、駐輪場や駐車場のような施設の利用料は精算対象とはしないようです。
契約解除に関する事項
書面に記名捺印をして、手付金を交付すると、契約が成立します。契約成立以降に契約をやめたい場合には、「解約」ということになります。
この項目では契約の解除に関する事項について、契約書の該当箇所をご紹介しています。契約書原本の該当箇所を読みながら、内容説明をします。
当社の書式では、該当箇所をご案内するにとどめています。これは、重要事項説明と売買契約書で違うことが書いてあるかどうか、細かく確認をされた方もいた経験に基づき、契約書の原本を見ならがら解説をしたほうが、お客様の理解に役立つという考えのためです。
他社の書式では、内容の抜粋を記載している会社もあります。
金銭の貸借に関する事項
この段落では融資の条件を買主が確認することを可能にするため、金融機関名、融資金額、金利・借入期間・返済方法・保証料・ローン事務手数料(消費税込みの金額)を説明しています。
当社では、銀行のローンセンターを通して、融資の申込業務を代行していますが、特に書面による銀行との契約を書面にしているわけではなく、銀行の信頼と営業方針に基づいて対応しているだけですので、公正取引規約に基づく厳密な表現では、「非あっせんローン」という扱いになります。
融資承認取得期日
融資承認が取れない場合に解約できる特約をローン特約といいます。融資承認取得期日とは金融機関による住宅ローンの本審査の承認を受ける期日です。
この期日までに本審査が承認されなければ、買主は白紙で契約の解除を申し出ることが可能です。契約締結時に交付した手付金も返還を受けることができます。もっとも正しくは印紙代などは損失になりますので注意は必要ですが、大金となる部分は保全されていますので、安心していただけます。
なお融資承認取得期日の明記がないと、買主は契約を解約することができません。現金購入ではローンはありませんので、ローン特約による解約はできません。
「契約解除に関する事項」で説明をした通り、この期日と連動して、ローン特約による解除期日を設定します。融資承認取得期日までに買主は融資を取り付ける見込みがないのであれば、買主は売買契約を解約をしなければなりません。適正に解約を行わないままでいると、買主は違約ということになり、違約金の支払い義務が生じます。
融資承認取得期日の定めを、売主目線で見ると、指定された期間まではローン本審査待ちで拘束されることを意味します。この期日までは別のお客様にセールス活動はできません。
契約条件としての「金銭の貸借に関する事項」
金銭の貸借に関する事項については、別紙の契約書においても同様のことを記述します。契約書において記述をしていますので、金銭の貸借に関する事項は、売主と合意した契約条件の一部でもあります。
金融機関の件数
例えば、上記画像でご紹介するサンプルでいうと、3銀行の名称を記述できる仕様となっていて、「こども銀行浅草橋ローンプラザ」のみが記入されています。これは、こども銀行の1行に申請する条件で、売買契約を取り交わしたということを意味します。この場合では、こども銀行の融資が非承認であった場合には、売買契約の解除が可能です。
しかし、こども銀行のほか、ぜいたく銀行、なかよし銀行etcなど、複数の銀行の名称が記載された契約書であれば、それぞれにチャレンジする必要があります。したがって、まったく利用する気がない金融機関は書くことは避けるべきといえます。
金融機関の特定
また金融機関の名称は具体的な名称を明記をしておく方が望ましいです。最近ではあまり見ませんが、以前は「都市銀行」など曖昧な表現にとどめる書面もありました。都市銀行くらいならまだ範囲が限定できるのでいいのですが、「住宅ローン実施金融機関」というような書き方をされる場合もあります。このような記述はなんとでも解釈できますので、理論上は、高金利のローン利用を迫られる根拠となる場合もありえるので、注意が必要です。
担保責任の履行に関する措置の概要
担保責任の履行に関する措置の概要とは、建物に欠陥が生じたときのため、瑕疵保証保険の加入などの対応をしているかどうかの確認です。保険提供者の名称、保険金額、期間などを記します。なお、地盤は対象にはなりません。
加入していない場合は、売主は自己資金で対応することを意味します。
新築住宅の場合は品確法にもとづく10年保証のため、措置が義務付けられています。新築住宅では、保険への加入の他、販売戸数に基づく供託金による方法も可能ですので、そのどちらかを記述します。
中古住宅の場合はこの保険の措置などを利用することは比較的少ないですが、システムは用意されています。中古住宅の場合は2年ということがほとんどです。これは宅地建物取引業法にもとづく契約不適合責任の期間と一致しています。
住まい給付金と付保証明
瑕疵保証保険の加入すると「付保証明」がもらえます。付保証明は住まい給付金の交付などに必要なほか、耐震基準適合証明と同等の効果があります、ローン控除の利用や登録免許税の軽減に活用できます。
手付金や預り金の保全措置
この3つの項目は支払資金の保全措置についての説明です。通常不動産の取引では手付金などのお金を先行して払い、一括でお金を支払うケースはまれです。契約から決済まではだいたい1~2か月、その間に預けたお金についての取り扱いについて、説明を加えることとなります。
手付金等保全措置の概要
手付金等の保全措置とは、宅地建物取引業者が売主である物件で、売買契約後、売主の倒産などで物件の引き渡しができなくなった場合に、支払った手付金等が返還されるための措置です。手付金等とは売買代金の全部または一部として授受される金銭や、代金に充当されるものをいいます。
一定額を超える手付金等を買主から受け取る場合には、保全措置が義務づけられています。保全措置を取る義務がない「一定の金額」は「未完成物件」と「完成物件」とで区分されます。未完成物件の場合は売買代金の100分の5以下、完成物件の場合は売買代金の10分の1以下であれば、保全措置を取る義務がありません。完成物件であれば、ある程度買主のリスクも低いということから、このような区分になっています。
もし保全措置講じていない場合についてですが、返還の申し出を受けることができる債権となり、冒頭で紹介した、業者が供託した営業保証金や弁済業務保証金から弁済を受けることになります。
割賦販売に関する事項
割賦販売とは分割払いにより代金を交付する販売方法です。
なお住宅ローンは割賦販売と言いません。金融機関による貸し付けにより代金を払い、金融機関にお金を返済するからで、内容が全く違います。
割賦販売は実務ではレアな方式です。筆者は対応したことがありません。URや地方住宅供給公社の分譲物件や、かなり昔の民間分譲マンションではこのような方式で販売されていることがあります。
割賦販売では、まず現金販売価格と割賦販売価格を明示して、引渡前に支払う金額と、賦払い金の内訳を明示し、支払い時期や方法を具体的に説明します。
支払金又は預り金の保全措置の概要
支払金・預り金とは、契約締結後で決済・引渡までに、不動産業者が売主に成り代わり買主から受領した金銭を預かるものです。たとえば、売買代金が抵当権設定金額(抹消金額)を下回るため、第三者に預けておきたい場合などは想定されるケースです。
保全措置を講じるかどうかは、業者の任意ですが、保全を行う場合にはその旨を説明します。ただ、保全措置を行おうとすれば手間やお金のコストもかかることから、売主がいったん受領して領収書を発行して、仲介業者に預けるなどして、保全を行わないケースも見られます。
なお、仲介業者に対する支払金や預かり金だとしても、次の名目のお金は保全措置の対象となりません。
- 受領額が50万円未満のもの
- 保全された手付金等
- 売主又は交換の当事者である宅建業者が登記以降に受領するもの
- 媒介報酬
容認事項について
容認事項まで来ると最後です。容認事項には、注意書きに相当する事項が連なっています。各段落で説明しきれない情報をこの段落で紹介します。容認事項は事例の画像のように、非常に長くなりがちなのが特徴です。
「容認事項」の記述では、個別的なことから全般的なことまで、「気になること」「言っておいた方がいいこと」は全て落とし込みます。そのため、むしろ、本編よりも重要なことが書かれている場合もあります。ここが最後の大詰めなので、気を抜いてはいけません。
画像の字が小さくて恐縮ですが、事例に即して言うと、「個別的なこと」の事例は、4、5、6、8、12が該当します。
たとえば、このケースで言うと、6番は反社会勢力の事務所があることについて言及しており、「告知事項」にも相当するかなり特殊な情報です。このような厳しいシビアな情報も、知りえたことについたは必ず言及していますので、容認事項は非常に重要な段落だといえます。
また、4番は浅草は観光地であること、5番はお祭りが多いことを伝えています。浅草を知っている人ならば、このあたりはお祭りが多いことは周知の事実かもしれませんが、何が常識なのかは、人によっても異なる部分もあります。
このように、まっとうな仲介従事者であれば、気になることについては伝えるように訓練されていますので、ご安心はいただいていいと思います。ただ、何が気になるかはお客様と不動産営業マンは共有していれば、より詳しく注目できますので、本来は、内見前でも、内見後でも、いいですので、積極的にコミュニケーションをとるとよい項目でもあります。
「全般的なこと」の事例は、1、2、3、7、8、10、11、13~26が該当します。おそらく、「常識」でくくられてしまうこともあるポイントですが、何が常識なのかは、人によっても異なる部分もありますので、注意して情報共有をしなければなりません。
買主の「そんなことは聞いてない」というご不満をなくすべく、少しでも言っておいた方がいいという事項は伝えるようにしています。「感じる」という部分は人によっても異なりますので、神経を使う部分であり、不動産屋としての経験と実力が現れるのが、容認事項の記述です。
【番外】重要事項を作成するスキル
重要事項説明の作成には知識スキルも重要な役割を果たします。スキルが足りなければ、いい加減な気持ちではなくても伝えるべき事項の把握ができません。
不動産業者や担当者のスキルでも差
スキル不足の者が作成する重要事項説明にあたると、お客様はリスクが把握できません。当社で経験した、他社の知識不足を疑った事例をご紹介します。事例は渋谷区のマンションの事例です。このケースでは、当社以外の仲介業者が、リノベーションの素材としてリフォーム施工業者にマンションを仲介していました。当社はその業者が施工したマンションを、一般個人の方に仲介しました。
適切に指摘をしてご説明すれば、お客様も、問題点の所在を把握できます。下記の事例は当社がお客様向けの重要事項説明の作成の参考資料として開示を受けた、業者買取時の重要事項説明書を拝見しました。重要事項説明書の中頃に出てくる、道路に関する説明です。記述内容の比較をご覧ください。
重要事項説明の記述不足は、わざと書かないというよりも、書くべきことを把握していないことが多いものです。事例のような物件は銀行によっては住宅ローン不可の場合もあります。その可能性をお伝えできます。
ちなみに「東京都安全条例」程度の情報は、開発などで土地を扱う経験があれば一般的な基礎的知識です。しかしマンション一室の販売に特化した経験では、経験値が低い段階では、追い付かない知識でもあります。問題点を把握することができないのが、知識不足、スキル不足の怖いところです。管理監督する人も忙しいので、担当者の経験が浅い段階では、事実上は足元を救われているケースもしばしば見ることができます。
こんなこともありますので、どうか、不動産仲介は当社にご用命くださいと、最後にPRさせていただきます(笑)
「備考」こそ重要事項の中の最重要
重要事項説明書に記載している内容は不動産用語・建築用語・法律用語に満たされています。専門の知識がないと、記述内容の意味が分かりにくい場合もあります。ただ、よっぽどの違法物件でない限りは、定型で記述してある項目には、異様なことはないものです。しかし、「お伝えしないと後々マズいことになる」点があれば別です。不動産業者は、必ず各項目の「備考」と銘打った欄に記述します。個別の内容が分かりづらくても、備考に書いてあることの意味は押さえるようにしましょう。