売り止め

「売り止め」のサムネイル

売り止め」とは、不動産情報としての物件情報は出ていますが、販売を一時中断している状態のことです。売り止めそのものは、通常あり得る現象ですが、悪質な場合があります。一部の業者は「売り止め」を意図的に行うことで、物件情報を独占します。俗に「囲い込み」といいますが、どちらかというと大手業者に多い傾向がみられ、「知らぬは売主ばかりなり」といった状況です。

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売り止めの実態

○売り止めの実態を知れば、売主である一般人の方々はきっと許せないばかりか、卒倒するほど憤慨するかもしれません。

仲介の形態について

○不動産業者の委託形態には一般媒介、専任媒介、専属専任媒介の3形態があります。

○原則的に不動産の仲介業務は、複数の業者で協力しながら進めることができます。

○売主担当のエージェント、買主担当のエージェントとして分けることが可能です。複数の業者が介在することも可能です。告を出している業者、売主から直接売却を委託を受けた人のみが販売の窓口であるというわけではないのです。

○上記の委託形態のうち、専任媒介・専属専任媒介は、売却
活動
を1社のみに任せると言う委託契約です。

この状態では、「専属あるいは専任であれば、誰か別の人が売ってきても、必ず報酬が得られる」ことを意味します。しかし、これで満足しない業者もいます。そこで「売り止め」という手法を使います。

両手

売りの委任さえ取っておけば、売れれば必ず手数料が入ります。それならば買主も自分で見つけ、その買主からも3%の媒介手数料を手にすれば合計6%の手数料となります。つまり、不動産業者視点で一番理想的なのは、売主から3%、買主からも3%の手数料をもらうことです。これを両手といいます。両手を実現するために一番いいのは、レインズに掲載しないことです。なぜなら物件を完全にコントロールすることができます。しかし、レインズへの掲載は法令の義務です。

数字に追い立てられ、欲深い業者からすると、これは面白くありません。本来なら両手の手数料を取れるのに、レインズに物件を公開したら、実質すべての不動産会社が買主を見つけてしまうからです。

売り止め

そこで「売り止め」という手法を使います。レインズを見た他の業者から問い合わせが入っても、実際には何も売却の話はなくても
「売り止めです」とか「お話が入ってます!」

と言って問い合わせを断ります。

物件情報は公開していながら他社は客付けができないという状況になります。形式的には法令を守りながら、情報を独占できます。
もちろん、本当の理由で売り止めの場合もあります。売りには出したものの断念した、不動産を売却しなくても資金調達のめどがついた、売主の事情が変わった、などです。
しかし、本当のところは悪事を働く不動産業者以外外部からは誰もわかりませんので、「売り止め」という手法が通用するわけです。

売り止めは悪徳業者??

以上の説明をご覧になれば、こういうのは一部の悪徳業者がやることとお思いになるかもしれません。しかし、実際には一部の大手がこれを組織的に行っていますので厄介です。確かに、大手ならば販売用の宣伝量も多く、それでも売れてしまうことが多く、明確な証拠はありませんので、通用してしまいます。2016年になって、やっと「売却ステータス」の公示を消費者に進めるようになりましたが、実態としては売り止めを行うのは大手が多く、業界内でも発言力が強いですので、役所もこれといった対応をしてきませんでした。

レインズを見ていると、延々と残っている物件も見かけます。しかしそれは売り止めを続けているわけですから、ある意味当たり前です。

ご自宅に投函される不動産チラシのうち、「売却物件募集」のチラシが多いことに気が付きましたか?一方で、不動産チラシを出している同じ不動産業者からの、「売却物件チラシ」のほうは、それほど多くないことに気が付きませんか?投函チラシに売り物件募集が多い理由を説明します。

本当に気の毒なのは、一般のお客さん

一番気の毒なのは、売れない物件を所有している売主さんです。売れない物件をお持ちの売主さんは、見学が来ないので不安になります。しかし後ろで売り止めをしているとも知らず、見学がこない理由を「高いから」とされているわけです。
しかし、仲介業者は、仕入れの元手がありませんので、痛くも痒くもありません。

そして、自社でお客様がつかないと売主に価格を下げるように交渉します。そしてそれでも売れないので、晒し物件になり、最後は投売り物件の完成です。

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この記事の作者

2010年から(株)ロータス不動産代表。ヤマト住建(株)等OB。宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター他。早稲田大(法)95年卒。在学中は早大英語会に所属。

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