不動産決済の準備と流れ

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決済とは残代金を払い、物件の権利と鍵を受領することです。決済によりすべての取引が完結します。法的に名義が変更(=所有権が移転)されて、自由に利用できます。名義が変更された権利証が書類として上がるのは3週間程度あとです。

残代金の支払いは振込による支払いが大原則です。当社でも何百回と決済を立ち会ってきましたが、預金小切手は1度だけでした。全額現金持参の経験はありません。

一連の作業に要する時間はおよそ1時間前後です。時間は金融機関の処理能力によって変わります。

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決済とは取引の完結のこと

「決済」という用語は非常に重要な用語です。契約とは違う概念なので、ぜひ覚えてくださいね。

ちなみに当社は手数料無料の仲介業者ですが、購入サービス売却サービスとも手続きは他社同等の対応をしていますので、ご安心ください。

所有権が移る

決済によりすべての取引が完結します。つまり決済を行えば、その後は買主の支配(所有権)となります。つまり物件の使用・収益・処分が可能です。早い人だと決済の午後から引っ越しをする人もいます。

決済を行うのは平日の午前中

決済は送金を伴いますので、銀行の営業日である平日が原則です。多くの場合、午前中に行います。銀行の送金実務が15時で締め切ることが多いのですが、午後の時間をバックアップにすることと、司法書士が活動するための時間的な余裕も必要だからです。可能な限りはやめるのがよいとされますが、おそくても午後の12時ぐらい理想です。また、少し遠いところにお住まいの方どうし等の場合、忘れ物などにも備え、早い時間に備えておきましょう。

司法書士も含め全員参加

決済の場では、買主と売主が参加します。両当事者がそろうと、仲介業者が業務の進行を進めます。ただ、決済の本当の主役は司法書士かもしれません。司法書士は当事者(売主&買主)の本人の認証を行い、書類の真正性を確認し、名義変更などの手続きを代行します。

状況により参加する人

状況により、売主が現在借りている金融機関の担当者が参加します。売主利用のローンが小規模な金融機関の場合、金融機関の担当者が抵当権の抹消書類を持参して、決済の場にて受け取ることがあります。

代金の支払いは振込が基本

日本国内の不動産の場合は、支払方法は日本円の振込送金が原則です。一部が現金で支払われる場合があります。全額現金は持参リスクにより、有価証券・ビットコイン・外国通貨は価格変動リスクがあることにより、原則として利用されません。

売主側が着金を確認しなければなりません。窓口での振込を行う場合は、窓口のテラー(窓口のおねえさん)の方に、かならず「至急扱い」と伝えてください。オンラインで振込をする場合には必ず至急扱いで、即時反映になっているはずです。

他の支払方法

手形・小切手は、通常の小切手はすぐに現金化できないこと、不渡りのリスクがあることにより扱われることはありません。

預金小切手は現金同等の安全性があるとされることから、買主の銀行口座が遠方等の場合など、ときどき使用されることがあります。

預金小切手とは、不渡りになる危険性が限りなく低いという特徴があります。預手(ヨテ)ということもあります。預金小切手は振り出した銀行が自分自身の店舗を支払人としているもので、事故届が出されているなどの特別な事情がない限り、所持人は銀行で支払を受けることができます。とくに「線引小切手」(横線あり)は、銀行は他行または銀行の取引先(の預貯金口座)に限定することで、盗難などによる呈示を抑止したり、支払い先をトレースできるようになります。

小切手

決済の準備

いい「決済」は準備で決まると言えるでしょう。当日あたふたすることがないよう、事前に確認させる書類も準備をしておきましょう。

決済日時の設定

決済はお金を払い、鍵と権利証を渡す行為と申し上げました。決済日とはいいかえると、買主にとっては「住宅ローンの実行が行われる日」であり、売主にとっては「抵当権の抹消が行われる日」です。利息の絡みもあって、一度決定するとなかなか動かせない性質のものだからです。

決済は午前中に行うと申し上げましたが、決済においては売主さんの抵当権の抹消も行われることが多く、万が一ミスが起きたときも対処できるよう時間に余裕を持っておく必要があります。

たとえば、振込先の書き間違いなどでミスが発生した場合には、送金元店に振込データが戻ってきますが、午後に時間を空けておけばやり直しが可能です。お恥ずかしながら筆者もこのミスに関わった経験があり、あらためてその意味を実感したことがあります。

また、登記所というお役所は事務は17時半で終了しますので、司法書士が移動や書類の補正をするための余裕もです。午後の時間はこれらの作業にあてられます。

決済場所の設定

原則として、決済の場所は買主が指定します。大手銀行や地方銀行、信用金庫など、一般的な住宅ローンを利用する場合は、金融機関のお店で、奥の部屋を間借りして行います。現金決済ネット銀行の決済では、不動産業者や司法書士事務所の事務室で行うこともあります。このような場合は事務室で作業を行った後、銀行の店頭に移動したり、オンラインで資金の振り込みを行います。オンラインで資金の振り込みを行う場合は、振込送金の上限金額がないか、確認をしなければなりません。

銀行のローセンター

銀行のローセンターの例


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銀行接客ブースの例

一般的な金融機関の住宅ローン以外の資金では、打ち合わせて決定します。現金決済、ネット銀行の住宅ローン、フラット35の場合には、仲介業者の事務所などで行うこともあります。買主で金融機関にパイプがあれば、金融機関の一室を借り受けて実施することもあります。

買主の準備

決済は送金元となる口座に自己資金の資金待機をお願いします。諸費用分も合算して送金元の口座に資金待機してください。待機資金の計算は、当社であれば決済の1~2週間前にご案内しております。

買主の書類や準備
書類・準備の項目 内容
写真付きの身分証明 運転免許証・マイナンバーカードなど公的機関が発行したもの
金融機関の通帳と銀行印 送金に必要です。最近の住宅ローンは通帳を発行しないことが多いです。
実印 登記にかかる書類で作成します
認印
キャッシュカード 通帳を発行しない場合はカードが必要です
住民票 現金の場合。住民票・印鑑証明は金融機関を通して手渡されます。

売主の準備

特に重要なのは権利証と抹消書類です。

権利証(登記識別情報ともいいます)は売買契約が成立した時点で、すぐに所在を確認してください。できる仲介業者ならば、売却委託を受けた段階で所在を確認しているはずです。事前に仲介業者を通して券面を司法書士に確認させましょう。

「抹消書類」とは抵当権の抹消に必要な書類をいいます。抹消書類を司法書士が代理受領ができるのか、決済場所の最寄りで受け取ることができるのかを確認し、必要な手続きを行いましょう。これもできる仲介業者ならば段取りを心得ているはずです。

意外と忘れがちなのが宅配ボックスや郵便ポストの番号です。当日緊張してあたふたしますので、数日前にはメモを取っておきましょう。

売主の書類や準備
書類・準備の項目 内容
すべての鍵を引き渡します
写真付きの身分証明 運転免許証・マイナンバーカードなど公的機関が発行したもの
着金を確認できるもの 通帳、キャッシュカード、オンライン端末
実印 登記にかかる書類で作成します
権利証(登記識別情報通知) 着金後に司法書士に委託します
印鑑証明 3か月以内。印鑑証明は事前に司法書士に内容を確認してもらいましょう。
住民票・戸籍抄本 登記簿の住所の変更や氏名の変更があった場合には必要
取扱説明書・パンフレット 物件に付属したもの
宅配ボックス・郵便ポスト カードや暗証番号を通知します

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【関連動画】「売却に際し遠方の不動産業者に売主が権利証を郵送し後日現金を払う取引は信用できるか」

司法書士による事前確認

現金支払いの場合は決済日当日に司法書士が書類の原本を入手することも少なくありません。当日、間違いがあるといけませんので、事前にコピーや写真などを用いて、内容を確認してもらうようにしなければなりません。住民票、印鑑証明、権利証(登記識別情報)などがこれに該当します。現物と事前の準備に相違があると大変な事態になりかねませんので、詳しくは担当の不動産業者に確認しましょう。

決済当日の流れ(基本)

決済は、おおむね以下のような流れで進みます。

  1. 司法書士による書類の点検と本人の確認・委任状の作成
  2. 司法書士のゴーサイン
  3. 決済金の振り込み
  4. 引き渡しの各種説明
  5. 残余の書類の記入

30~40分くらいで終わると、売主買主様はスムーズに終わることができます。我々不動産業者や司法書士の先生は「今日は早かったですね」などと言い合い、スッキリした気持ちで去っていきます。

長いと、だんだん話すことがなくなり知らない人同士の葬式のようになるので注意が必要です。

権利証(登記識別情報ともいいます)はそのまま司法書士にあずけ、当日付けで登記手続きを行います。後日、名義が変更されたご自身の権利証が郵送されてきます。

司法書士による本人確認・書類の点検・委任状の作成

まず、すべての作業に先立ち、司法書士によるご本人確認と書類の記入があります。所有権移転の登記提出書類(登記原因証明情報、登記提出の委任状、受取の委任状、住民票等)を記入します。なお、ローン利用の場合は、関係書類は登記に先行して銀行経由で司法書士の手に渡るのが多いようです。現金による決済の場合は、当日書類を持参します。

この作業は5分くらいです。

ローン実行と残代金の送金

司法書士の書類が確認できれば、取引が間違いないことが確認できましたので、残代金を送金することができます。振込は時間がかかりますので、各種の残務書類の記入の前に、まず振込を実施することが一般的です。銀行に対して、代金の振込、諸費用の引出の手続きを行います。振込にあたっては、所定の金額を振込用紙、引出用紙を記入し、通帳と一緒に銀行担当者に渡して、手続きを行います。この作業は、着金まで考えると、15分~30分くらいです。

振込依頼書

振込用紙(振込依頼書)の例

振込の至急扱い

不動産決済では「至急扱い」の振り込みが原則です。通常、不動産決済を多く扱う銀行店舗の担当者であれば心得ているはずですが、不動産決済を多く扱わない小規模店や、売買を扱わない仲介業者は十分に心得ていない場合もあります。念のため確認をしましょう。

振込の至急扱いとは、銀行ではお金の送金を行なう専門部署(センター)を通さず、支店窓口から直接、振込先視点の相手方口座へ送金することです。「直接打電」「センター経由なし」ということもあります。不動産取引の決済では着金の確認が取れるまで全員部屋で待機していることが多く、迅速な処理が大切です。

センター経由で振込を行うと1時間以上かかることもありますが、至急扱いにすると15分くらいで完了します。オンラインバンキングなどの振込送金では、振込確認の画面に送金先の名称が表示されます。これは至急扱いです。

引渡書類の作成と授受

送金依頼をかけますと、資金の着金を待っている間に、各種の残務の書類のやり取りを行います。この作業は15分くらいです。

売主からの引渡・説明書類など授受

売主から引き渡しに関する書類の説明と記入があると思います。売主が取得したときの物件資料です。商品物件で売主保証や、適合リノベーションの情報があるときは、この時に説明があります。

管理組合関係の書類

マンションの場合には管理会社に提出する入居届、管理費の自動引落の書類など、何点かの書類の記入があります。当社であれば、管理組合関係の書類はお預かりして、管理会社に送信するところまで対応します。この作業は5分くらいです。

権利証の取扱の説明

権利証や各種の書類の取扱のご注意について、司法書士からアドバイスがあるでしょう。主に、パスワードの取扱の注意、実印と別に保管すべきなどです。権利証の郵送先の確認も行います。この作業は5分くらいです。

なお権利証とは平成17年以降(地域によって異なる)あとに登記された物件は、正式名称で「登記識別情報」と呼ばれている場合もあります。登記所のオンライン化がその頃より進んでおり、物件の名義人のIDが記載された情報が交付されるようになっています。オンライン化した登記所から順次、「登記識別情報」として交付されるようになっています。

最終の諸費用の支払い

最終の諸費用とは、具体的には、仲介手数料(仲介手数料無料の場合は不要)、登記費用などです。「引渡書類の作成」などの業務が終わるころには、金融機関の振込処理や現金引出処理が終ります。処理が終わると振込伝票の返却があり、引出し現金が手渡されます。この作業は5分以下です。

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売主の着金確認

売主により、着金確認を行っていただきます。確認が終わりますと無事終了となり、解散となります。この作業は5~10分くらいです。

売主側の抵当権の抹消がある場合は、着金後は司法書士は銀行に抹消書類を取りに行きます。

火災保険の契約

事前のお見積やご説明による契約内容にしたがい、申込書の記入を行います。書類は保険申込書と支払書類です。火災保険も重要事項の説明、内容確認を丁寧にしなければなりません。送金が長引いた場合は着金町の間に、送金が早い場合には、着金後に行うといった具合に、柔軟に対応します。

支払は自動引落かクレジットカードです。保険会社の手続きに従って、支払い情報を確認します。当社が代理店として入る「あいおいニッセイ同和損保」の場合だと、カード情報は、保険会社のサイトに移動して、オンラインで手続きします。この作業は5~10分くらいです。

特殊な流れの決済

標準的なパターンと異なる決済もありますので、仲介業者さんとしっかり確認しましょう。

オンラインバンキングの決済も最近は増えてきました。安全第一ではありますが、楽なので対応できるか検討してもよいかもしれません。

現金決済や一部のフラット35の決済

現金決済や一部のフラット35利用の場合はローンの利用がないため銀行の応接間が利用できません。

書類の手続きを任意の場所(不動産店、司法書士事務所、お客様の指定の場所)で行い、送金業務を銀行のカウンターで行います。当事者が複数あつまり、書類の仕事になりますので、場所の設定は落ち着いた場所がよいでしょう。多くの場合は不動産店の応接室になると思います。

書類の確認を終えてから、銀行店頭に移動します。店頭にて送金を行います。1日当たりの送金額の上限を解除すれば、店頭で行う作業を、オンラインの振込で送金できるかもしれません。その場合は銀行に移動する必要もありません。金融機関のルールを確認をしてみましょう。

売主さんの着金が確認できれば、終了です。売主さんの着金確認は、多くの場合電話で行います。通常は電話での確認を受け付けてくれるはずですが、銀行にもよるかもしれません。着金確認の手段は、売主さん側の責任で銀行店頭にご確認をしていただいておくといいでしょう。

ネット銀行の決済

ネット銀行の場合は物理的な店舗がありませんので、銀行で集まって決済をするという概念がありません。

あらゆる支払い項目が振り込みになりますので、事前に、売却代金、仲介手数料など各種費用の振込先の確認が大切となります。

当日の決済手続きは任意の場所(不動産店、司法書士事務所、お客様の指定の場所)で行います。当事者が複数あつまり、書類の仕事になりますので、場所の設定は落ち着いた場所がよいでしょう。多くの場合は不動産店の応接室になると思います。

この振込先と金額の明細は不動産業者が調べて、ネット銀行と打ち合わせをしてくれますので、来るべきローン契約ときに、その内容を確認して、承認を行います。ここまでが下準備です。

決済日の当日はネット銀行指定の司法書士が書類の確認をしますが、点検が終わりますと準備完了の合図を司法書士が銀行に連絡して送金実施となります。

残代金のほか、あらかじめ登録した振込先に一気に送金されますので、現金にタッチすることはありません。

買替の決済を同日に行う場合の動き

買替で購入側の住宅ローンの銀行の条件で、同日に決済をすることがあります。売り決済を行い、移動して、買いの決済に臨むような動きとなり、けっこう大変です。半日は完全に拘束されてバタバタすると想定しておいてください。

きわめて段取りよく動かねばなりませんので、別ページにて説明しています。買い替えの方は『売り買い同日決済の動きと注意点』を熟読してください。

決済後の作業

終わり良ければすべて良し。決済日当日から買主は自由に利用することができるとはいえ、あと行程もありますので注意しましょう。

不動産取得税の支払い

不動産取得税の支払いが3か月ほどあとにあります。納税の納付書のかたちで都道府県から請求があります。とくになにか申告しなくても、登記の情報にもとづいて請求は到来します。減免の対象になる場合については、手続きが必要になる場合もありますので、不動産の売買の担当者に確認をしてください。担当者が頼りない場合には、都道府県の納税事務を扱う担当部にきけば、適切に教えてくれると思います。

火災保険の支払い

火災保険はキャッシュレスでの支払いを選択した場合には、保険会社やカード会社の引落の規定に従い、翌月や翌々月に課金があります。今は火災保険は最長5年です。しかし5年後に人間は忘れてしまう生き物です。自動更新にしておいたほうが良いでしょう。

新しい権利証(登記識別情報通知)

新しい権利証が届くのは後日になります。決済が終わると、ただちに司法書士は法務局におもむき、当日中に登記の手続きを行います。このため登記日付は決済日が記入されます。法務局内における登記手続きの仕上がりは1週間くらいです。法務局からは登記識別情報が発行されます。通常は司法書士が受領します。>その後、登記識別情報は司法書士が確認のうえ、新しい権利証として司法書士事務所により装丁されて、後日郵送されてきます。決済日から見ると、権利証が届くまで、通常は2週間くらいはかかります。

下の写真が権利証(登記識別情報通知)のサンプルです。下部に英数字が印刷されて、シールで隠しています。これはパスワードです。この英数字と実印、印鑑証明があると権利の移転が可能になってしまいます。将来売却するとき以外にこれを見る必要はありませんので、シールは剥がさず、そのままにしておいてください。

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この記事の作者

2010年から(株)ロータス不動産代表。ヤマト住建(株)等OB。宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター他。早稲田大(法)95年卒。在学中は早大英語会に所属。

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