ネット銀行の住宅ローンのメリット・デメリットを具体例で解説

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実務をやっていますと、代理店ルートの拡充により、令和2~3年ごろからネット銀行をお客さまに紹介することが多くなった気がします。低金利もさることながら、ネット銀行の住宅ローンのメリットとして多くのお客様が挙げるのは、多様なサービス(団信が多様で、死亡・高度障がい以外の危険補償がついているケースも)です。

デメリットとして不動産業者として感じるのは、頻繁な内容変更で最新情報の把握が難しく、サービスの変化がわかりづらかったりします。施策の変更は借り入れ後も生じる場合があります。また、手数料タイプのみで、借入期間が短い場合は不利になるのも盲点です。

代理店経由なら、人とのコミュニケーションが可能となります。審査の勘所ポイントが的確にヒアリングできます。裏技的に(?)審査対応が柔軟になる、スケジュール調整がスムーズになるなどのメリットがあります。当社でも、主に代理店経由でネット銀行の住宅ローンのご紹介をしています。

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ネット銀行の住宅ローンとは?

ネット銀行とは、営業上最小限必要な店舗のみを有し、インターネットなどで取引を行う銀行です。口座開設をはじめ、手続きはすべてオンラインです。キャッシュカードの授受は郵送で行います。通帳はありません。ネット銀行でも、多くの銀行が住宅ローンを提供しています。

ネット銀行は、伝統的な手法の銀行とは異なるタイプの銀行です。斬新なサービスを提供する傾向があります。ただ、メリットを生かすためには、商品の特徴を把握する必要もあります。

当社の経験では、リアルの代理店を通した取り扱いがあるので、下表のうち、上の3社の利用が多くなっています。PayPay銀行はまだ対応歴がありません。

この記事を初めて書いたのは2019年ですが、そのころと比べるとやはり少しづつ変わってきた感じはします。伝統的な銀行がネット銀行のサービスを取り入れたり、またネット銀行が実店舗を通したサービスを開始したりしています。

住宅ローンを扱うネット銀行

銀行名 備考・コメント
SBI住信ネット銀行 代理店を通した実店舗のサービスあり。
ソニー銀行 代理店を通したサービスあり。ときどき審査がアグレッシブ。5年・25%ルールなし。ソニー銀行の手続きについて
auじぶん銀行 au携帯との連携で金利安く。審査基準は三菱UFJBKに近い気がする。ただし旧耐震は対応。auじぶん銀行の手続きについて
楽天銀行 金利はネット銀行の中では高めも手数料を抑えめ
イオン銀行 イオン店舗を通したサービスあり
新生銀行 担保評価からめだがそれさえクリアすれば審査はゆるやか(と言われる)
PayPay銀行 よくわからないです。

無店舗営業

無店舗で営業していますので、ローン契約(金銭消費貸借契約)などはオンラインで行います。手続きの進行も・メール・電話・郵送でやります。

決済も同様です。ネット銀行の住宅ローンではオンラインで完結します。決済時に集合するのも不動産業者の店頭などとなり、時間は非常にスムーズに進みます。オンラインを利用した不動産決済については、関連記事をご覧ください。

写真は当社の例ですが、なんどかネット銀行の決済でも、関係者の皆様に足を運んでいただいたことがあります。買主様のほか、司法書士、売主が全員集合し、書類の点検を行うと、司法書士(銀行指定)が銀行に電話をすれば、資金が振り込まれます。

不動産店の例

写真は当社の例です。

印紙なしの電子契約

来店は不要であるがゆえ、契約はオンラインによりおこないます。そのため、ローン契約書の作成・署名・捺印がありません。

書面に対する署名・捺印がないですので、印紙を貼る必要がありません。借り入れる金額により課金される印紙税(1万円、3万円、6万円など)がかからないので、じんわりとした有利さがあります。

多様な団信の選択肢を提供

伝統的な銀行の団体信用生命保険(団信)は基本コース(死亡&1級高度障害)のみが無料です。それ以上のサービスは有料です。

一方、ネット銀行は多様なサービスがメリットです。金利低下の競争も、恐らく行きつくところまで行ったのでしょうか。昨今は金利上乗せなしで可能な団信の優位性を競争ポイントにしたアピールが多くなってているようです。

全疾病保障の団信をうたう銀行

たとえば、住信SBIネット銀行の「スゴ団信」、auじぶん銀行の「がん50%保障」、楽天銀行の「全疾病特約」などは条件が付きますが、住宅ローンの金利のみで、あらゆる疾病で所定の状態になった時に保障を受けることができます。銀行の母体の金融グループのサービスと連動があり実現させています。

「就労不能状態」という大前提が付き、このハードルは意外と高いのですが、ないよりは圧倒的に有利です。それに伝統的な銀行だと、同等以上のサービスを得ようとするならば、保険料を支払う必要があります。

大手銀行よりも有利な団信をうたう銀行

ソニー銀行においては、がん50団信において、ガンにより所定の状態になると、住宅ローン残高の分を50%保障します。

SBI新生銀行においては、団体信用介護保障保険を提供しています。所定の要介護状態に該当した場合に支払われる保険です。

イオン銀行においては就労不能補償保険が付帯されます。

ネット銀行の住宅ローンのデメリット

逆に、実務をやっていると、ネット銀行固有のデメリットもあると感じます。ハードルの高さなどがデメリットになります。

審査の基準が厳しい

人間が一切介在しない分、ハードルが少し高くなっていますので要注意です。ハードルの例としてあげられるのは、自己資金率、家族形態、勤続年数、雇用形態、などですが、銀行によって特徴がことなります。

たとえば、いわゆる自営業や、資本金で1000万未満の中小企業にお勤めの方は、厳しい判断を下されるケースが多いと思います。単身者の方はただ単身というだけで謝絶というケースもありました。

ちなみに7、8年くらい前の以前ですと、どのネット銀行も自己資金2割となっていましたが、いまはファミリータイプですと、そこまでは言わないようです。しかし、投資マンションにするという懸念のため、シングルの方自己資金が2~3割くらいは必要とされることもあります。

不動産業者で代行できない銀行もある

楽天銀行、イオン銀行はお客様が自主的にローンの取り付けを行わねばなりません。不動産業者介在できないということは、書類の手配やチェックもご自身で対応しなければなりません。家を買うのは一緒に一回か2回ぐらいしかありませんから。一般的に住宅ローンは消費者の皆さんは不得手なものです。不慣れな部分があると、これが意外と面倒です。

不動産業者が代行したり、窓口になれるタイプならば、不動産関連の資料は不動産業者が動けますので、このあたりのサポートは楽なはずです。

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全ての作業を自分で、締め切りを守りながらやる必要があります。融通が利く売主ならよいのですが、そうでない場合、困惑することも

キャンペーンで商品内容が頻繁に変わるのでわかりづらい

ネット銀行間の競争が激しくなっているため、金利や付帯サービスなど、キャンペーンで商品内容が毎月のように変更されます。結果として商品の内容がよくわからないことがあげられます。「書いてあることを読め」というスタンスとも言えますので、利用者の高いリテラシーが求められます。

インターネット上では昔の情報が残っていたままであったり、販売者間での相違があったりすることで、お客様の認識と、金融機関や不動産業者の説明が食い違っている現象が発生しえます。

お恥ずかしながら筆者も案内ミスをしたことがあり、銀行本体や正規代理店のウェブサイトなど、一次情報をしっかり把握するように気を付けています。

手続きの時間を要する

郵送やメールでのやり取りが基本ですので、手続きの不備があると、送付の往復で時間が過ぎていきます。これは新規で使うネット住宅ローンのハードルの一つです。審査のための人員の体制も発展途上であるため、案件が多い春・秋の時期は、スピードが遅くなる傾向があります。

また、本審査はさまざまなプロセスが重なっていきますので、手続きが遅くなります。

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ネット銀行の手続きはオンラインと郵送を用いるため意外と時間がかかる

抹消の手続きに手間を要する

将来の売却の時の話ですが、売却に伴う一括返済したときの抵当権の抹消書類の受領で、ネット銀行では特定の場所に行かねばならない場合があります。東京や大阪などのネット銀行の支店です。これらが決済場所から遠隔地の場合には、そのままだと当日に抹消書類の受領ができなくなりますので、全国対応が可能な司法書士事務所に依頼する必要が出てきます。

当社の売却サービスでは全国対応の司法書士も知っていますが、準備が必要ですので、事前におおせください。

対応できない物件がある

多くのネット銀行では借地権の対応はしていません。同様に、多くの銀行は、築年数は65年までに完済しなければならず、築古の物件では35年の利用ができないことがあります。なお、一部の銀行では対応している銀行もあります。

事前審査の信頼性が低い

お客様の手で応募して行うネット銀行の「事前審査」は、本審査で覆ることがあります。実際には年収と借入の比率を自己申告により計算でみているだけで、信用情報機関にブラックリスト情報の確認などを一切していない銀行もあるからです。

このことは経験のある不動産業者ならば知っていますので、不動産業者では、お客様自身の手による事前審査を通ったと表明される案件については、契約を受け付けることがありません。

ちなみに代理店等の人の手を介した審査であれば、信頼されます。主なネット銀行は何かしらの代理店を通すことができるので、不動産業者ルートでの紹介がいいと断言できます。これは重要なポイントですので、後述します。

保証料タイプを選択できない

伝統的な銀行では保証料タイプというものを選択できます。実は、保証料タイプは、借入期間が短いと、保証料が安くなるという特徴があります。借入期間が短かい場合などでは、保証料のほうが安くなることもあります。

保証料は、例えば15年だと借入額の1.2%くらいです。10年だと借入額の0.8%くらいです。これが影響し、期間が短い住宅ローンでは保証料タイプのほうが総コストが安くなりますので、伝統的な銀行のほうが有利な場合があります。

これについては、「住宅ローンの保証料型と手数料型のメリット・デメリット」という記事で詳しくご案内しています。

施策変更リスク

住宅ローン以外でも施策を変更するリスクを考えなければなりません。大手銀行は「社会的なインフラである」という建前を大きく意識しているので、施策の変更には非常に慎重だったりするのですが、ネット銀行では身軽な側面があり、施策の変更は借り入れ後も生じる場合があります。

たとえば、「他行口座からの資金移動無料」「ATM利用料無料」等のサービスの展開がありますが、未来永劫続くかどうかは不明です。クレバーでドライな分、サービスを見限りスピードも速いです。たとえば、新生銀行では、2018年10月7日より引き出し手数料は変わりました。

金利上昇時のリスク

024年秋にはネット銀行の住宅ローンの金利をメガバンクの最優遇が逆転する現象も起きました。令和6年の住信SBIの基準金利のアップは記憶に新しいところです。

これらの傾向から、どうやら金利上昇時にはネット銀行のほうが金利上昇スピードが早いようです。この明確な理由は提示されていませんが、預金などの調達力の違いはあるのではないかと思っています。ネット銀行も預金などで資金調達をすると思いますが、多くの住宅ローンの貸し付け原資を市場から調達していると思います。したがって新規上昇時には店舗を有し、地道な営業活動する伝統的な銀行の方が有利なるかもしれません。

ちなみに、全期間固定金利では、一般的に資金調達力のある大銀行が有利でです。とくにメガバンクが優勢です。この現象は、金利上昇が起こる前から生じていました。ネット銀行では、全期間固定にもかかわらず、大変動が発生すれば、「やむを得ず金利を変更する」という規定がある銀行もあります。ソニー銀行などでは「125%5年ルール」がないとされています。

ネット銀行代理店によるサービス

代理店を経由してサービスを展開するネット銀行もある

一部のネット銀行では、貸金業の免許をもった銀行代理店を窓口に不動産業者とのコミュニケーションチャネルを持つ銀行があります。

人間が介在するので、デメリットのいくつかは解消されます。

2021年1月現在では、SBI住信ネット銀行、じぶん銀行、ソニー銀行、新生銀行などが該当します。イオンのモール内に出店しているイオン銀行もそのタイプです。

代理店経由のネット銀行

代理店経由の申し込みを受け付けるネット銀行の例

人間によるコミュニケーション

画一的な審査基準は変わらないのですが、証明書では伝わらない事項について、「報告書」「稟議書」等の事項で審査部門へ伝えることが可能ですので、有利な運用をすることができます。

また、書類の手配やチェックは代理店の担当者が行いますので、精度があがります。代理店によっては、「お住まい」「ご近所」「ご勤務先」「不動産業者の店頭」などに出向いてくれますので、負担も軽減されます。実際に当社でお願いしているネット銀行の代理店は熱心な人が多く、審査の内容にもすぐに問い合わせることができますので、リアリティを感じてもらうことができます。

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意外と人を介したほうがいいということも。審査の急所を教えてくれたりとか・・・

スケジュールが早い

ローン審査部門を代理店サポートすることで、一体で作業を行うことができます。急ぎなので、案件をねじ込むなどの対応ができる場合もあります。そのため、ネット経由より代理店経由のほうが若干早くなります。

ユニークなところでは、飯田グループホールディングス参加のファミリーライフサービスさんというローン代理店があります。同社はフラット35のほかに、住信SBIネット銀行の代理店を行っており、飯田グループホールディングス傘下の建売業者の物件については、3週間で決済まで完了です。これは通常、ネット銀行のリードタイムが一ヶ月半かることから考えると、驚異的なスピードです。当社もファミリーライフさんとは提携を結んでいます。飯田グループの建売でしたら仲介手数料無料で扱うことも可能ですし、是非お声をかけください。

柔軟な審査対応

オンライン経由だと画一性がある審査では柔軟な対応ができなませんが、代理店経由だと、審査の基準は柔軟に運用されることもあります。たとえば勤続年数。表ルールでは勤続半年が必須となっていても、実態は3か月でも受けてくれる場合もあります。このケースでは、お客様の属性や背景を担当者が確認することで、アピールに加えることができたけーすです。

弊社もゆうちょ銀行や、アルヒ、バリューエージェントなど。ネット銀行の代理店を行うローン会社との交流があります。ローン会社の営業担当者は、ネット銀行の営業担当とと直接コミュニケーションを取るので、銀行の審査担当に、お客様の状況について詳しく情報を伝えることができます。これがオンラインでやる審査とは、ひと味もふた味も違う理由です。

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この記事の作者

2010年から(株)ロータス不動産代表。ヤマト住建(株)等OB。宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター他。早稲田大(法)95年卒。在学中は早大英語会に所属。

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