売主直売のメリットとデメリット
売主直接販売は、不動産仲介業者を通さずに売主が直接販売することを指します。「業者売主」の場合と「一般人(個人・法人)」があります。
仲介業者を通さない分、仲介手数料がかかりません。不動産取引に手慣れた方ならメリットになります。
一方で、仲介業者が分担していた業務を、買主は自ら分担する必要があります。不利益の調査確認や、手続き(ローンや決済など)で、自ら手を動かす場面が多くなります。手慣れていないステージで手を出すべきかは十分検討すべきといえます。
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author:春日秀典
目次
売主直売の2つの態様
不動産物件の売主にはおよそ2つの形態が存在します。すなわち「業者売主」か「一般人(個人・法人)」です。
不動産業者による販売
個人が売主の資産売却の中に混じって、業者が売主である商品物件が不動産広告に出てきていることがあります。主にリノベーションマンションや新築一戸建てです。多くは仲介業者による広告なのですが、売主が直売していること広告もあります。。
リノベーションマンションや新築一戸建ての分野で仲介業者により物件が販売されているのは、営業の手間がかかるからです。売主業者は開発や工事に力を入れています。
ちなみに、新築マンションや大規模な建売団地では、売主もしくは売主の代理による販売というシステムが一般的です。
仲介業者を通さない個人間売買
個人が売主になって直接販売をすることは可能です。ただ不動産業の免許を持たない個人は不動産広告サイトに出稿できません。そのため、個人間で売買をするには、親族やご近所の人間との売買となります。
メルカリやジモティのようなサイトで集客をして売買することも可能ですが、こちらは多くはないようですね。契約条項でのリスクを感じるようです。知っているもの同士なら話し合いで解決できることも多いですが、完全に知らない者同士が直接売買するとなると怖いものです。
不動産業者を経由した契約書・重要事項説明書の書式でなければ、事実上、住宅ローンを取り付けることができません。
なお、当社においては、セールス活動・交渉活動が不要な場合、契約面における不都合をなくすためのに、通常の仲介手数料よりも安く、個人売買サポートというのもサービスとしてやっています。
売主直接販売のメリット
売主直接販売は、仲介業者を介さないために手数料が不要となります。以下では、売主直接販売の主なメリットについて説明します。
仲介手数料が不要
一般的に、不動産仲介業者を利用すると、物件価格の約3%に相当する仲介手数料が発生します。しかし、売主直接販売では、仲介業者が介在しないため、この手数料を支払う必要がありません。
通常、物件購入のための諸費用は約8%と言われていて、大きな部分を占めるのが仲介手数料です。そのため、売主直接販売は、物件価格を割安で購入できるという点で非常に魅力的と言えるかもしれません。
直接交渉ができる
もう一つのメリットは、直接的な交渉が可能であることです。仲介業者に騙されているのかもしれないと感じる人にはよい手法と言えるでしょう。
また、売主自身が物件について最も詳しいため、物件についての詳細な情報、状況や履歴についても、より正確な情報を得ることができる可能性があります。
売主直接販売のデメリット
メリットとなりえることは、デメリットにもなりえます。売主直接販売は両刃の刃ともいえます。
情報格差と情報の隠匿
不動産の販売では売主側の情報量が多いため情報格差が存在します。
売主直接販売においては、売主自身が物件の情報を提供するため、この情報格差を悪用して、売主によって、物件の情報が隠匿されることがあります。買主が「ババ」を引かされるということです。
仲介業者が介在すると、仲介業者は自らを守る必要があるため、隠匿するということはありません。仲介業者は自ら主導で調査し、情報を提供します。悪質な行為を行えば、仲介業者自身が免許を失うことに直結します。赤の他人である売主のため、そのリスクは取りません。
よくない担当者ならば情報を後出しをすることはあるかもしれませんが、隠匿することは考えづらいと言えます。
物件の選択肢が限られる
物件の選択肢が限られます。売主自身が販売する場合は、自分の所有する物件だけしか販売できません。仲介会社は、不通に依頼してきた普通のお客様の売り物件を取り扱っていますが、そちらの方が選択肢は多いからです。
手数料を無料にするためだけであれば、かえってコスパが悪い場合もあります。仲介業者が扱う仲介手数料無料の物件も選択肢に入れてもよいと思います。
個人売主の物件は情報が不十分
仲介会社が売り出す物件は、不動産会社が査定して、物件にかかわる諸状況を調査した上で出品されます。そのため物件の状態や価格などについて細かな情報が提供されます。
一方で、売主直接販売すると、売主自身が物件の価格設定や物件の状態について認識を提供するするため、買い手にとって、十分な情報が得られない場合もあります。
『将来の再建築が不可だった!』などのような物件をつかまされないようにしましょう。
対応が不十分
仲介会社の仕事は物件情報をスーモに掲載するだけではありません。営業に付随する業務として物件の質問や調査に応じたり、売買に付随する業務として、ローンのアレンジや決済の段取りなどに対応します。むしろ、こちらの方が仲介業者の質だとも言えます。
実は、筆者自身もサラリーマン時代に、売主業者として自ら販売を行ったことがあります。自らの体験として申し上げると、売主直接販売では、売主は、日ごろの開発の業務に加え、売主自身が販売に関するすべての業務を担当します。そのため、買主向けのサービスであるローンの対応などまでは、手が回らないことも多いです。ほかにも、忙しさゆえの対応が遅れや十分な情報提供ができない事態があります。
そもそも、個人が売主の場合、個人自身は不動産業界に精通していませんおで、売買契約の手続きなどがうまくいかない可能性もあります。
売主側のデメリット
ちなみに、情報格差によるデメリットは売主にも跳ね返ってきます。情報に不透明さが存在する以上、買主は最低・最悪の想定をして物件の購入を検討することになります。最低最悪の物件につけられる金額は、おのずと安くなりがちです。このような状況をレモン市場といいます。
「仲介手数料がかからないんだから!」ということを根拠に、ドンドン価格交渉をされることになります。
売主直接販売はお買い得なのか?
けきょくのところ、売主直接販売はお買い得なのでしょうか?ここでは、お買い得物件が出る確率と価格交渉の可否について検討していきます。
お買い得物件が出る確率
売主直接販売には、不動産会社を介さずに、直接売主との取引が可能なため、仲介手数料を支払わなくても済みます。お買い得な物件が出ることがあるとされています。
ただ、売主も素人ではないため、価格については調査をして販売をしています。全体の中の位置づけをしてきますので、おトクかどうかと問われれば、どちらでもないというのが答えです。
むしろ、売主業者は自らのブランドを高く位置付けるため、高額になることもしばしばあります。
ただ、重要な視点として、そもそも、売主直接販売の物件自体がすくないわけです。そのなかで、値付けミスなどにより安い物件を出すことがないなどと考えると、お買い得物件を見つけることは容易ではありません。
価格交渉の可否
売主直接販売では、不動産会社を介さずに直接売主と交渉することができますが、価格交渉については、安易に期待をしないほうがいいと思います。スムーズに交渉できるとは限らないという点は注意が必要です。
個人の売主の場合には、売主からも相手の顔が見えるので、うまく交渉をすることができる場合もあるかもしれません。
業者売主は会社として行動しますので、通常の物件の価格交渉と変わらないと考えたほうがいいでしょう。期待を寄せていると裏切られることになりますので、交渉が行き詰まって感じることでしょう。