投函チラシで「売り物件募集」が多い理由

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売り物件募集の投函チラシが多い理由は、売却受託を取ることを重視しているからです。売り受託は確実に手数料にありつけるため、効率が高いと考えらています。

売り物件の情報を上げる行為を「物上げ(ぶつあげ)」といいます。仲介業は原価がありませんので、売り物件が多いほど有利です。大手ほど物上げに熱心なのは体力に余裕があるからです。

「購入希望客を抱えています」など、ストーリーが書かれた売り物件の募集チラシは、まず嘘とみて間違いありません。

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売り物件を集める理由

不動産業者にとって大切なのは売り物件の発掘です。後述しますが囲い込みは怖いので、本当は「囲い込みをしないと明言」をする不動産業者に、売却依頼をすることを、お勧めしたいところです。

売り物件の受託は効率が良い

購入側の手数料は、購入までの意思決定のフォローをすべてする必要があります。これには長い時間がかかります。買う・買わないは、購入を希望する人の自由です。買主側の仲介業務は、物件を押さえている売却側とくらべると、業務効率は悪くなります。

これに対して、売却委託を取ることができれば、仮に両手が取ることが出来なくても、ある程度の効率が見込めます。売主は理由があって売りに出しますので、「売らない」ということは考えられません。委任を取ることができれば、最低は片手の手数料にありつけます。売却の委任の取得に注力することで、必ず手数料を取得できます。長期にわたる可能性もある購入フォローに比べ効率がよくなります。

両手をとれることがないとしても、売却側の不動産業者は、どこかほかの会社に販売営業をしてもらえればいいのです。売り側の仲介業者は必ず取引に関与できます。さらに、首尾よく売主・買主の双方に関与することができれば、両手の手数料にありつくことができます。これが、これが売却物件募集チラシが多い理由の1つです。

商品ラインナップの改善

売却物件を受任する会社のなかには、物件を囲い込みを行って、他社からの顧客紹介をシャットアウトするという方針を取る会社もあります。別の他社からの顧客紹介を断ります(この手法は、何も了解を得ないと詐欺の恐れがあり)。

両手手数料にすれば6%の手数料が取れます。専任返しをもらえれば、最大で12%の手数料になります。これも売り物件募集に注力する理由です。

なお両手を狙うということは、売却業務は自社で完結させる必要があります。預かり物件が多くなれば、1件当たりの手間はさがるため、対応が悪くなりがちです。ただ「自社だけの物件」という営業トークができるので、他社の物件と差別化することができます。物件のオリジナリティが出せるので、営業効率が上がります。対応が悪くなってしまって買ってくれる人に売ればよいわけです。また、売れなくても、数が多く、反響効率が上がれば他の物件で売れる確率が高まります。

原価がかからないので売れなくてもよい

仲介業者にとって、販売物件の在庫は原価があるわけではありません。売れなければ手数料は入りませんが、売り案件を保有していても、損があるわけではないのです。原価はかかりませんので、売れても売れなくてもラインナップは多いほうがいいに決まっています。いろんな会社からでも、同じ会社からでも、次から次へと売り物件募集のチラシが入りますが、在庫リスクがないことも、仲介業者が売り委任を集め続ける動機です。

しかし、売主視点では、多くの売り物件を預かる業者は悪い業者です。物件が多くなれば担当者の対応が疎かになるからです。1担当者が10件20件と売り物件を預かっているようであれば、多すぎるといえます。

大量のチラシ

いわば「カモ」を狙ってると言えるのかもしれません。

嘘のチラシ

「物件限定で探す」とアピール

よく、「手持ち客」の多さをアピールするような不動産業者のチラシを見ませんか。折込ではなく、直接ポストに投函されているチラシです。このようなチラシに記載されている購入検討客はまず実在しません。率直に言って申し訳ないと思いますが、これは情弱狙いのタチの悪いチラシです。とはいえ、最近はこのテクニックも知られることも多くなりました。

このチラシの目的は「相場を知らないなら高く買ってくれるかもしれない」と期待を抱かせて、とりあえず売りに出させるという作戦です。

さて、なぜ嘘と断定できるかというと、少し考えれば、理屈に合わないお話ばかりだからです。また、このようなチラシを出す業者の卒業生の話を直接聞いています。そしてなにより、多かれ少なかれ、仲介業者であれば経験している手法だからです。

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「気前のいい客」がいます

よくあるお話の一つは、「相場を知らない気前のいい客」が不動産物件を購入を考えているというストーリー仕立てす。真剣な家探しをしている人なら、適正範囲の上限で購入されることはあるかもしれません。しかし、相場度外視で家を買う人はいません。少なくとも私の経験ではいませんでした。このあたりが理屈に合わないお話です。ただ、もしかしたら、都心の、芸術品レベルの希少な物件ならいるのかもしれません。

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「自分でリノベーションしたい客」がいます

よくできたストーリーだなと感心したのは、「○○○号室のリノベーション住宅を検討しましたが本当は自分でリノベーションをしたいお客さんがいます・・・」というものです。リアルタイムで販売してる物件に対して投函されるので、一瞬そうなのかなと考えてしまいました。

これも少し考えれば変な話だと気づきます。自分でリノベーションをしたいお客さんが、あえて物件限定で、リノベーション物件を見に行くことはありません。時間の無駄と言えます。リノベーションの参考として、どこでもいいので、施工業者限定で見るということはあるかもしれません。このあたりが理屈に合わないお話です。

大手も同じ

大手の仲介業者が投函業者だったりする場合は少し厄介です。普通の人なら信ぴょう性を感じるからです。ときどき「大きな会社が出す広告なら万が一、嘘はないだろう」と考える方もいますが、そんなことは全くありません。会社の規模にかかわらず、全て嘘の広告です。

全部ウソというのは不動産業界では常識ですが、外部から検証しようがないので、基本はやりたい放題といえます。仲介業者に原価はかからないので、売れなくても仲介業者のフトコロは痛みません。売主と業者は利害を共有していないわけですね。これが売主にとって迷惑かもしれません。

チラシを頻繁に出す業者であれば、【○○不動産 チラシ】と検索すれば、いろんな情報を取得することができます。

この記事の原型を初めて出稿したのは2011年ころで、このようなチラシは多かったのですが、今も変わりらないようです。物上げの実情を書き記すこのような記事はよく見かけるようになりましたが、それでも変わりません。見たい情報だけを見て、聞きたい話だけを聞くのが人間の性なのだと思います。

狙いは「両手」さらに「専任返し」

当社は囲い込みをしないとお約束をしております。広く協力関係を広げる売却で高額スピード売却を目指します。ご期待ください。

囲い込み

不動産の取引においては、単独業者の両手仲介と共同仲介(片手仲介)という場合もあります。どちらが標準というわけではなく、状況によって変わります。しかし、仲介業者の視点でみると、売主と買主の双方の両手のほうが、手数料の額が多くなります。

しかし、本音では不動産業者は、本来、両手で手数料がほしいわけです。支店レベル・担当者レベルでは、できれば囲い込みたいと考えていて、横行するのが実情です。一般的な不動産会社では、「物件の囲い込みはしない」と、明言することができません。

専任返し

首尾よく囲い込みができて、さらに売主さんが「お人よし」ですと、狙いに行くのは専任返しです。専任返しとは買取業者に安く売却をあっせんするこで、その返礼として、買取業者から再販売の委託をうけることです。買取業者に卸すして、その売却も成功すれば、12%の手数料を狙うことができます。1粒で4度おいしい取引です。

Hand drawn halloween house. Vector sketch illustration.

売れないまま放置されて買いたたかれるのは避けたいところですね。

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この記事の作者

2010年から(株)ロータス不動産代表。ヤマト住建(株)等OB。宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター他。早稲田大(法)95年卒。在学中は早大英語会に所属。

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