住宅(マンション・一戸建て)の買い替えの注意点
買い替えとは、別の視点でみるならば、売ったお金による旧宅のローンの返済と、新居の購入のローンを同時期もしくは連続して成立させることといえます。
方針はおおむね「売り先行」か「買い先行」に分かれますが、一時的に売り物件と階物件を同時にホールドするという作戦もあります。
売るにも買うにも相手がいる話であり、自分の都合よく進むわけではありません。市場価格と残債を比較して余裕がなければ売り先行であり、時間をかける必要があります。
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author:春日秀典
目次
買い替えにおいて考えるべき重要なこと
持家を売り新居を買うということは、売物件のローンの始末をつけ、買物件のローンを取り付けるということです。一見、悩ましくヘビーな作業のように見えますが、しっかりした担当者と進めれば、十分対処は可能です。
ちなみに、マンション売却にフォーカスした流れは、「マンション売却の流れと経費」をご覧ください。
買い替えで考えるべき重要なテーマ
買い替えで考えるべき重要なテーマは2つあります。
- 既存ローンの完済をどうするか
- ご購入活動・ご売却活動、いづれを先行させるか
言い換えると、買い替えの心配ごとは、とりもなおさず、売る物件の残債をいかに完済するかということに帰結します。旧ローンの始末や新取り付けに心配がないのであれば、何も心配はないのですが、少なくとも、どちらかのローンの対処があることが多いと思います。
どうすべきかは、旧物件の売却予想価格(最悪・最低の金額を予想)と、残債の額を見比べながら考えます。旧物件の売却価格の確定が必要な場合は売り先行となります。完済の経済的な余裕があるときは買い先行が検討できます。どういうことか見てみましょう。
買い先行
買い先行とは、まず購入物件の目処をつけ、売却物件を靴室にしたのちに売却を進める方式です。気に入った物件が先に見つかればこの方法になります。
じっくりと買う物件を見定めて、空室にしてからジックリ売ということは、自由度は大きいですが、ジックリと行動するには諸々の余裕が必要です。購入物件の決めてからから売却活動をする行為は売却価格が不確定だからです。
売り先行
売り先行とは、売りから入って売却価格にめどをつける方式です。売却の価格を固め借入金の返済に余裕を持ちたいときは、先に売るほうが良いでしょう。
物件の売却をすれば、当然、引き渡しの期限があります。買主もいつまでも待ってくれるわけでもありませんので、購入のための時間のあります。引渡し期限は3か月内外の期間を設定することが多いと思います。
買い替えの期間
不動産会社が段取りよく運ぼうとしても、売却にも購入にも、相手がいる話です。購入と売却の二つのお取引を同時に行う買い替えには、もともと難しい面があります。その分、不動産仲介業者にとっては、取り組みがいがある、腕が鳴る分野です。
ただ、買い替えのスケジュールは余裕を持つことをお勧めします。短期勝負は狙ってもできませんし、住宅の買い替えを急いですすめても、いいことはあまりありません。。売却にかかる期間ですが、不動産サイトに掲載して個人向けに売り出した場合、相場どおりに売却希望価格だとしても3か月ほどは見ておくのがよいでしょう。
不動産会社が段取りよく運ぼうとしても、売却にも購入にも、相手がいる話です。
引渡猶予
売却資金を前提に残債の抹消を予定している場合、買替は引渡猶予を取ることが望ましいかもしれません。入金を受けてから1週間程度、引っ越しの余裕をもらうことです。これは不動産業者にはしっかり言わないと交渉はしてくれませんので、このような知恵を与えてくれる不動産業者を選んぶのもいいかもしれません。少なく当社はその資格があります(笑)
査定の見極めは慎重に
不動産の売却は、少しでも高く売りたいのが人情です。わが子のように自分の家はかわいいものです。しかし、買い替えを意識した売却の場合、査定価格へ上乗せはお勧めできません。希少性がある物件ならば無理とは言い切れませんが、通常は、相場より高い物件を買いたい人はまれです。
最初はいいことだけを言って関心を引き付けようとする業者は多いです。むしろ、ほとんど全てそうなのかもしれません。不動産業者は売却の受託をせねば始まらず、売却の受託をしても在庫費用がかからないので、とにかく物件を集められればトクなのです。
具体的なお話、ご質問については、売却の相談でお問い合わせください。
買い先行の買い替え
ローンの返済能力に余裕があるならば、購入を先行させる方法があります。
主な買い先行の手法
購入を先行させることができれば、じっくり時間をかけて物件を探せます。手法の詳しい情報は「買い先行の買い替えと金融機関の旧住宅ローンへの対応」という記事を書きましたのでご覧ください。
買い先行と一言で言っても、流れはさらにいくつか分類されます。現在の状況と資金的な余裕を整理して最適なものを選びましょう。主なものは以下の通りです。
- 停止条件付の売却
- 期限を定めた売却
- 二重ローンを組む
旧ローンの返済が余裕である場合
おおむね完済に近い状態だったり、すでに完済をしている場合は、買い替えと言っても、完済の心配はありませんので、新しいローンの心配だけになります。現金の余裕があれば、一括して返済してしまうことも方法ですし、「ダブルでローンを組む」も有効な作戦です。
二重ローンでの買い先行
買い先行ですすめているとき、いい購入物件物件がみつかったとき、旧ローンの取り扱いが焦点となります。資金繰りに余裕があれば、二重にローンを組むことも検討できます。
二重ローンの取り扱いについて
通常の銀行では二重ローンを組む場合には、所定の返済比率に収まる範囲であれば、差し支えないとされています。所定の返済比率とは新ローンと旧ローンを合算したときでも、十分な返済能力があるかどうかを確認する比率です。通常は、前のローンと新しいローンを合算して一本の住宅ローンとして想定した返済比率で十分返済できるかを確認します。
組みやすいのは2銀行
筆者の知る限り、ネット・メガのなかでは「みずほ」「ソニー」の2銀行は、返済比率の判断で旧ローンを切り離してを査定するシステムになっています。なお、フラット35も以前は旧物件ローンは返済比率に入らなかったのですが、2020年4月から制度が変わりました。
売り先行の買い替え
売却価格が固まっていれば、資金計画も確定させることができます。前の段落でご紹介したように、同時に2本のローンを組めなかったり、購入までに時間の余裕がある場合には、売却を先行させる方がいいでしょう。
旧ローンの返済に余裕がない状態
とにかく、なるべく高く売る必要がある場合があります。売却価格と債務の関係がギリギリのような場合は、旧宅のローン完済に余裕がない状態です。少しでも市場で高く売るために、個人への売却を前提に、ゆっくりと進めましょう。返済を確定させるべきですから、ご売却の先行がお勧めです。売却条件が確定すれば収入額が決まるので、ご購入の資金計画も立てやすくなります。
売却を先行させる場合は、契約の条件として「引渡期日は△月○日まで猶予する」という条件を、ご購入検討中のお客様に提示します(後述「引渡猶予」)。一方で、少しでも売りやすくするには、条件は買主の希望に合わせられることも考えなければなりません。
買い替えローン
売却価格がローン残高を下回る場合を「残債割れ」といいます。残債割れの対処には現金を用意するのがベストですが、それが難しい場合は「買い替えローン」を各金融機関が用意していますので、活用できる場合があります。買い替えローンは、新規に買う家のローンをオーバーローンします。オーバーローンですが、これまでの返済実績がありますので、各金融機関ともわりと積極的に取り組んでくれます。
例えば現在の住宅ローン残債が2,500万円。売却価格が2,000万円。この場合は「ローン完済には500万円が不足」です。新しい家のローンに追加して500万円の上乗せします。上乗せ分で返済に利用します。借り換えローンは、物件価格としては明らかに担保割れです。しかし、借り換えローンを利用するお客様は「今までの返済実績」がありますので、金融機関は前向きに検討します。なお、買い替えローンでは、売家の抵当権の抹消と買家の抵当権の設定が、同じタイミングであることが必要です。
ただ、「買い替えローン」に限らず、残債があるときの買い替えの作戦はいくつかあります。リンク先の記事もご覧いただくといいでしょう。